西国街道7 有年宿→長船
本格的に街道を歩きはじめて3年目、夏は歩く時間がまとまって取れるので、ぐいぐいと街道を進む事が出来ます。1年目は中山道、2年目は北国街道・三国街道、3年目に選んだ道は西国街道。
真夏の京都から下関まで約570km、猛暑との共存も年々コツを得てきましたが、身体と会話しながら西を目指します。
2023.08.08
1.スタート地点まで
1日の始まり。
少し街道を進んで恐る恐るふり返ると、太陽が後ろから追いかけてきます。晴れなくていいんだよと、心の中で言うのですが、あと1時間くらいで容赦なく太陽光線を背中に浴びせてくる事でしょう。
只今の時刻は05:27。
今日は平日の火曜日なので、トラックがビュンビュン走り抜けて行きます。
街道歩きは週末が一番リラックスして歩けて、土曜日よりも日曜日の方がよりリラックスできます。何故なら世の中の空気が一番リラックスしているのが日曜日だから、その空気感を感じられるのも、街道歩きならではの楽しみです。
2.有年宿
魚への供養塔。
道を作る際に池にいた魚を売って、建設資金調達をした為に、この地に池魚塚を建てたとの事。何と温かいお話しなのでしょう。
街道を歩いていると、馬や牛の供養塔はよく見かけますが、面白かったのは中山道和田宿の”みみずの碑”。田畑に栄養を与えるみみずに感謝し、供養してたそうです。
朝からいい気分で先に進めます。
家の屋根の下の三角形の壁面を矢切りと呼びます。
矢切り部分に屋号が描かれた建物はよく見かけますが、有年宿では矢切り一面に紋様が描かれた家が次々と現れます。
有年宿の中心部に入っていきました。
おおむね宿場の入口と出口には守護神などの役割を兼ねて神社があります。
街道を歩いていると、どこからが宿場町なのかわからない場合がよくありますが、神社を目安にすると、ここから宿場町だな!とテンションが高まったりもします。
至る所に鳥獣防止フェンスやネットが張り巡らされています。
撮影する直前まで階段の上の方で鹿が、ウロチョロしてました。
農作物を食べてしまうのでしょうね。気の毒ですがそれぞれが生きる為には、仕方ありません。
淳泰寺 今日の言葉。
サザエさんの一言が意外ですが、重い言葉ですね、すぐ近くに流れる川の名が長谷川。サザエさんの作者は長谷川町子、関係あるのかもしれません。
里山の風景が本当に美しい。
晴れるのは熱くて嫌ですが、里山の風景が美しく写ります。稲がキラキラ輝いて見えますね。
大避神社。
絵馬殿にはたくさんの迫力満点の絵馬が飾られています。広々とした境内のお手入れは大変だと思われますが、とても綺麗に整備されてます。
地域の方々から大切にされている神社なのですね。
朝食を食べたベンチの前はトラックのチューニングショップ。
ショーウィンドウに菅原文太が演じていた、映画”トラック野郎”の主役、一番星こと星桃次郎のシールが貼られてました。
懐かしい、小学校の頃大好きで、映画を観たり、プラモデルを作ったり、絵を描いたりしてました。
一番星の相棒役、やもめのジョナサンを演じた愛川欽也さんの子だくさんのシーンや、ドライブインでの大乱闘、最後のお約束の港までパトカーを振り切りヒロインを送る暴走シーン、思い出すときりがありません。
3.有年峠
さぁ大好きな峠道の始まり。
坂道が始まると無心になれます。
呼吸を落ち着かせながら歩調を整えて、標高を稼いで行く過程が大好きです。
先程は鹿を見ました、この中には猪もいそうです。
ゴルフボールがまた落ちてました。
見渡しても近くにゴルフ場があるとは思えない風景なのですが、どこかにあるのでしょう。
街道を歩いているとゴルフ場の中を歩く事があります。
中山道美濃國の十三峠の途中にある、中仙道ゴルフ倶楽部。なんと街道をカードが横ぎります!
山道で石を積んでいく感覚で、ゴルフボールが、あちこちに積まれてます。
詳しくは↓
もうひとつ、ゴルフ場の中にある一里塚と古墳を楽しめる場所が、日光壬生道の小山ゴルフクラブ。
小山ゴルフクラブの敷地内は、街道と県道が貫通していますので、カートが街道の下をトンネルでくぐります。
詳しくは↓
ずいぶんと脱線してしまいましたので戻ります。
山陽道と西国街道は時代と共にルートを変えており、ときどきどっちだかわからなくなります。
実はGoogleマップは旧道を丁寧に地図上に示しておりとても助かりますが、西国街道と山陽道の区分けには相当苦労していることが、マップ上で感じられます。
4.船坂峠
船坂峠に入ります。
峠といいましても、街道は一番楽なルートを選ぶので、登山の峠と比べては失礼な場合が多々あります。
東海道の鈴鹿峠は、どれが峠であったか気付かないレベル。一方でしっかり昇るのは、中山道の碓氷・和田・鳥居・馬籠峠、東海道は箱根峠、三国街道の三国峠でしょうか。
あっさり峠は終わりました。
道路標識がたくさん残っていましたので、かつては国道2号だったのかもしれません。
5.三石宿
歩き始めて4時間、暑い中熱中症にかからずに12時間近く歩き続けるには、水分塩分補給以外に身体を冷やす必要があります。
市街地を歩く場合は、コンビニやスーパーマーケットなどでゆっくり買い物をすると、全身を冷やせますが、本日は山道なので冷やす場所がありません。
この様な時は神社なのですが、本日のルートには神社が無く、茂みで休憩すると様々な虫の餌食になるので、ようやくみつけた休憩場所が駅の待合室。
ここでは1時間ゆっくり休みながら身体を冷ましました。
三石耐火煉瓦株式会社。
1892年の創業以来120年以上にわたり、耐火レンガの製造及び販売を行ってきてます。道中には関連産業と思われる事業者が散見されました。この街は三石耐火煉瓦の企業城下町なのでしょうね。
三石の煉瓦拱渠群。
”拱渠”とは、”きょうきょ”と読み、アーチになった水路のこと。
上には山陽本線が通っております。
下り線が赤いレンガで上り線が黒いレンガで異なっていたのは、竣工時期が下り線:1890(明治23)年、上り線:1911(明治44)年に竣工されています。
6.峠道と国道
峠道の前後は、国道と並走する区間をよく歩きます。
東海道箱根・鈴鹿峠の1号、中山道碓氷峠の18号と和田峠の142号、三国街道三国峠の17号。
どの道にも共通するのは、退屈であることです。
明治天皇最後の御幸が、西国街道を山口→広島→岡山の順に巡ったので、最も新しい小休所のひとつかもしれません。
岡山県らしい塀鬼瓦が登場しました、桃です!
この後雉や猿や犬が出てくるのかと期待しちゃいます。
茶屋経営の立地条件として、川の近くと坂道の上が人気です。
特に坂の上は、息を切らしながら昇って来る旅人は、心身ともに休みたくなっていますので、呼び込みにころっと引っかかる事でしょう。
茶屋とは少し異なりますが、ガソリンスタンドも上り坂の途中が好立地と聞いた事があります。スピードが落ちるので入りやすいからで、逆に下り坂はスピードが落ちにくいので、立地としては良くありませんね。
こんなソーラーパネルみたことありません。凄すぎます!
備前焼の窯元がちらほらと目に入ってきます。街の風景が変わってくるのが楽しみです。
7.片上宿
鳥居の工事は初めてみました。
なんだか見てはいけない物を見てしまった気がしてなりません。
本日の昼食会場は拾銭食堂。
三代目のご主人に店名の由来を聞いたところ、昭和10年10月10日に開業。語呂が良いので拾銭食堂に、拾銭で食事を提供していましたが、その金額での食事は贅沢だったそうです。
さすが備前市、狛犬が備前焼です。
しかし階段を昇ったら片上湾が望めるかと期待してたら、全く見えませんでした。瀬戸内海見たい!
街道から少し離れ、片上湾を見に行きましたが、造船所があるわけでも漁港があるわけでもなく、ただただ静かな湾でした。入江が瀬戸内海から奥すぎるのかもしれません。
大きな建物は、現在は営業していないアルファビゼン商業施設。
かつては岡山最大の百貨店、天満屋が入っていたそうです。
8.日本遺産 備前焼のふる里
備前焼のお店が、紹介した画像の5倍はあります。店の看板に職人さんの名前を連名にしている窯元がとても多かったです。名前で勝負するのですね。
まだまだ街並みは続きます。
天津神社は備前焼尽くし。
床・壁・屋根まで焼物で飾られた建物、今まで見たことがありません。
圧倒されました。
このタイプの新幹線、もう走っていないのかと思ってましたので大興奮。一編成だけ、こだま号としてJR西日本管内で運行しているそうです。
9.香登
香登と書いて、"かがと"と読みます。
かつては備前焼の窯元も多かったそうですが、片山宿と藤井宿の間の宿で賑わい、今でも醤油や味噌蔵が残っています。
近くの宿場街よりも往時の雰囲気が残っていると感じました。
香登は里山風景も美しい!
この付近は宿泊施設が街道沿いに全く無い為、少しそれて赤穂線沿いの道を歩き長船に予約した宿を目指します。
10.長船
長船と書いて、"おさふね"と呼びます。難読の地名が多いですね。
西国街道から外れましたが、とても美しい道の姿をしてます。
11.番外編
前職の先輩の田村さんと久々の再会。
定年退職後に、準備期間が3ヶ月位しか無い中、故郷の美作市市会議員に立候補し見事に当選。
私がなかなか辿りつかないので、車で宿泊先までお迎えに来ていただき、岡山市内まで約1時間のドライブしながらお話しし、延長戦を市内のお店で行いました。
懐かしい話から生き様まで、田村さん昔からギラギラしてましたが、磨きがかかっている様に感じ、刺激をたくさ頂きました。
田村さんありがとうございました。
しかし岡山駅から出る電車の行き先が凄い。
在来線は、広島方面・四国方面・山陰方面・姫路方面。新幹線を入れると、大阪・名古屋・東京から福岡・熊本・鹿児島まで、北海道以外の大きな島には全て乗り換えなしで行けます。
今日は最後の最後までよく歩きました・・・・
あれれ、ゆるいとはいえ、峠越えたのに31階しか昇っていない、まぁ目安ですね。