説明の質を高める方法は、見えていないことを見えるようにすること
「説明力を上げる」というと、「説明の仕方」に意識が向きがちです。
でも説明とは、「誰に」「何を」「どのように」という要素から成り立っているので、「どのように」ばかりを強化しても説明力が上がるとは限らないのです。
「何を」の部分を強化するひとつとして、「見えていないことを見えるようにする」という方法があります。
見えていないことを見えるようにする方法として、「数値化」があります。具体的な例を2つ挙げて紹介していきます。
「腸内環境」も「見える化」したことで行動が変わった
「重い・軽い」ではなく「重量」で示したり、「明るい・暗い」ではなく「照度」で示したりすると、説得力があがります。
「健康状態」だって、さまざまな数値で判断されますよね。
少し前のことです。
私は腸内環境を分析してくれるサービスを受けてみました。
腸内環境っていうのも見えないものです。
これまで私は、何となく「発酵食品は腸内環境に良いだろう」「ゴボウとか根菜類など食物繊維の多いものを食べていたら、腸内環境は改善されるかな」などと思っていました。
でも、「感覚」ではなくて「事実」を知りたいと思ったのです。
検査はとても簡単。検査キットを送り返して数日後に結果の説明がありました。
結果表には、私の腸内にいる菌の種類と割合が一覧になっていました。
「○○っていう菌は、歯垢の原因菌とも言われていますが、歯のクリーニングはどれくらいの頻度で行ってらっしゃいます?」
「えっ、そんなことまでわかっちゃうんですか! えーと、1年に1回くらいかな」
「もうちょっと頻度を上げるといいかもしれませんねー」
「は、はい」
「果物とか海藻類はとられてます?」
「果物はあまり食べてないです」
「根菜類はよくとられているようですが、果物や海藻も食べるといいですよ」
これが「問診」だけだったとしたら、「あー、そうですかー」という気持ちになったと思いますが、自分の数値を見ながらだと納得感が半端ない!
この説明を受けたあと、私はすぐに歯科の予約をしました。そして、果物も買うようになりました。
どこにも出ていない情報を数値で示した調査員
仕事でも、「どこにも出ていない情報」を数字で示すと、ググっと説明の質が高まります。
私の知人で、調査会社の調査員をしていた人がいます。
お客様から依頼された案件に対して、彼女はとことん「事実」「数字」を集めることにこだわっていました。
今はネットで調べればさまざまな情報を集められますが、ネットで情報を収集してまとめたものは「調査」といえるのか。
ネットで情報を集めるだけなら、お客様自身でできることです。
調査員としてのプライドが彼女を動かしていました。
日本の電機メーカーから依頼された案件に携わったときのことです。
彼女は、当時台頭してきた海外の新興勢力をベンチマークするため、世界のショールームを見て回り、新商品の導入状況、ショールームのレイアウトや商品の見せ方などを調べていました。
そこで彼女はこう思ったのです。
ショールームの面積も調べよう。
面積に関する情報はネットで調べても出てきません。
各メーカーのショールームがどれほどの面積なのか、当事者にとっては知りたい情報のひとつでしょう。
しかし、だからといって、ベンチマークで調査している都合、メジャーを取り出して測るわけにもいきません。そんなことをしたら、怪しすぎます。
ショールームの人に質問しても、ちゃんと答えてくれるかどうかもわかりません。
むしろ、「なんでそんなことを質問するの?」と怪しまれてしまうかもしれません。
そこで彼女は考えたのです。
部屋の面積は幅と奥行きがわかれば計算できる。
メジャーがなくても自分の靴のサイズと歩数から計算できる。
彼女は、一歩一歩靴を合わせるようにして店内を歩いて歩数を数えました。
それを3回繰り返して平均値を出しました。
報告書上では「面積○○㎡」と、たった数文字の情報です。
彼女は顧客に説明するとき、こうした地道な作業を経て面積を出したことなど、自分からはひと言も言いませんでした。
でも、顧客が気づいて
「この面積ってどうやって出したんですか?」
と質問してくれました。
自分の靴のサイズを参考にして測ったことを告げると、顧客は驚いたそうです。
そして、「ぜひ若手の勉強のために」と30名を超える社員の前でプレゼンをすることになったのです。
これぞ現場で集めた生の情報であり、なおかつ「○○のショールームのほうが■■より広い」のような「感覚」での説明より、はるかに説得力があります。
彼女からこの話を聞いたとき
「数値化は工夫次第でできること」
「ネットで検索しても出てこない情報に価値がある」
と感じました。
「感覚」は目には見えないものだし、人によって違うので、できる限り「事実」を伝えたいものです。
そのために「数値化」は強力な手段となります。
難しいと考えがちですが、今あるものでできることが意外とあるかもしれません。
どんな工夫ができるか考えてみるのも面白いのではないでしょうか。
それでは、また。
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