若手社員は大事、だが。
最近、他社の同業者と話していると「若手社員の退職が止まらない」という、せつない話題になることがあります。
ぶっちゃけ僕の職場でも、周囲から目をかけられていた若手社員が辞めてしまったことがあります。
会社が彼にかけていた期待や人件費のことを考えると、なんとも胸が痛いところですが、その反面で「しょうがないよな」とも思うんです。
人間いろんなタイプがいて、期待されると張り切る人もいれば、それがプレッシャーになり心を病む人もいるし、「そっとしといてくれよ」と苛立つ人もいる。
会社員というのは、他社とはビジネスとして繋がれますが、同じ職場だと決してギブアンドテイクの関係ではないんですよね。
だから彼がやめてしまった本当の理由はよくわからないし、わかったところでもうどうしようもありません。
ただ、ひとつだけ言えるのは、次に辞めさせたくない人にさらなる期待やエールをかけたところで、もし前任者と同じタイプの人間なら、また去ってしまうのは間違いないということです。
僕はお世辞が嫌いで、20代の頃は「頑張ってるな」と言われると「あんたに何がわかるんだ」と口にはしないまでもついつい睨み返してしまうような、ホントに部下にしたくない若手ナンバーワン世界チャンピオンでした。
おそらく他人に比べて「評価されたい」とは思ってなくて、放っておいてくれた方がよほどいいと考えていました。
別に自惚れていたわけではなく、自分には経験が足りていないことを猛烈に自覚していたのです。
買い被られたくなかったんでしょうね。
だから「頑張ってるな」という褒め言葉に続く思惑を「でもその程度か」と予測変換して一方的に憤っていたんです。
ホント、俺が俺の上司じゃなくてよかったと思いますよ。
若手社員から見たら、僕なんて自分の父親くらい歳が離れています。
わかり合えるはずもありません。
早く自分の仕事を継承させたいのは山々だけど、それはぐっと我慢して放牧するしかないんです。
失敗なく楽に仕事ができるよう、ノウハウを教え込みたくなるのは歳上のサガですが、それより失敗を覚えさせる方が難しいわけです。
放牧中に動きまわって有刺鉄線に刺さり、二度と流血しないよう自分で動きを加減するしかないのです。
それに会社において「若いから」という理由で優れているのは、体力と運動神経、そして周りの「失敗しても仕方ない」という理解だけです。
20代は周りがサポートしてくれるので、失敗は若手だけの特権なんです。
30代や40代の失敗に「仕方ない」と思ってくれる人なんかいません。
経験則のない若手は、とにかくいいことも悪いことも積み重ねるしかありません。
そして数歳上の先輩の行動を見ながら少しずつHPやMPを貯めるしかありません。
課金で楽にアイテムが揃うことはないのです。
先の同業者とのハナシで「若手は大事にしないと」という声がありましたが、こういう人に限って「若いから発想が柔軟」などとアイディアを出させたり、「好きなように君の感性でやりなさい」と丸投げしてしまうことがあります。
これは最悪です。
「若い奴の気持ちは俺がよくわかってる」という優越感に浸りたいだけです。
大事にすることの意味を履き違えると、経験のない人に、取り返しのつかない重大な失敗をさせてしまいます。
小さな失敗を重ねさせることが重要なのです。
過保護もいけませんが、2年目3年目となった頃には、ある程度放牧して時々様子を聞くくらいがちょうどいいのかな、と思っています。