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離した先にあるもの

娘が突然成長した。

身体的なものはもちろん日々変化しているのだけど、手に取るように心の成長が見られて驚いてしまった出来事があった。
正確には、心に身体が追いつく瞬間を見た、というのかもしれない。


自転車に乗れたのだ。

補助輪をはずして、ひとりでハンドルを握りペダルを漕ぎひたすら真っ直ぐに走るだけ、それだけのことなんだけど。

自転車を購入したその日、彼女はお昼ごはんを食べるのも惜しんでひたすら補助輪のついた自転車で走り続けた。
ついて回る親の方が悲鳴をあげるくらい走り続け、疲れ果ててペダルを漕ぐ力が無くなり泣いていた。
そらから2回ほど補助輪付きのまま、自転車という乗り物を楽しんでいた。

補助輪を外すのは早い方がいい。
頼れるものがあることに慣れると自らバランスを取るのが怖くなるだろうと思っていた。
1歳半過ぎから乗り続けたストライダーのバランス感覚が残っているうちに外そうと私は心に決めていた。

転んだら痛いし怖いと言う彼女に、説明し、YouTubeではじめての自転車に挑戦する女の子の動画を見せると様子が変わった。
自分と年の近い子が、怖がらずに挑戦する姿を見て感化されたようだ。
わたしは、
すごいね!お友達はしっかり前を見てるね!
脇を締めてハンドルを持ってるね!
しっかりペダルを漕いでるね!
などと、気をつけてほしいポイントをわざとらしく言ってみたりして、
この子5歳だって!娘ちゃんの方が小さいね!
と、YouTubeの女の子より年下だからわたしはここまで出来なくても大丈夫なんだ。失敗しても平気だ。と思わせるような発言もしてみたり。

補助輪なしの練習は実質2日だった。
1日目、ほんの少し手を離すくらいはOK。
うまく出来なくて泣いたり怒ったりもしたけど、ぐらっとしたらすぐに支えるを繰り返して走り続けた。

2日目、離す支えるを繰り返しながら、いつもの道を往復した、その復路。
漕ぎ出し安定した辺りで『いいよ!』と娘の声。
手を離す
並走する
グラつかない
スピードが出る
安定する
気づいたら話しながらひと区間走り切っていた。

夜寝る前、漕ぎ出しをひとりでできるようになるにはどうするか、を話した。
ストライダーの時みたいに、足で地面を蹴って進むの。蹴って進んで真っ直ぐに走り出したら足をペダルに乗せてコギコギコギコギ〜だよ!
と伝え、よし!やってみよう!とエアー自転車漕ぎしてみた。
彼女の頭の中では、どうやらうまくいったようで、嬉しすぎてわけわからないテンションになっていたけれど、とにかく楽しくて嬉しくて仕方なさそうで、見ているこちらが嬉しくなった。

変なテンションになった彼女が自転車の夢を見ている頃、隣で寝顔を眺めながらふと思った。

この子のやりたい事や、興味を持ちそうなことをたくさん伸ばしてあげたいけれど、
それは心配も増えるのだなと。
それでも手を離さなければ、手に入らない新しいものがきっとたくさんある。
親はみんなそんな葛藤をしながら、やらせてくれたんだな。家の中にいたら安全だけどそれじゃ見つけられない事がたくさんあるのだな。と。
わかっている事だけど、わかっていなかった。
今回の経験を通して実感した。

心配するし、不安もあるけど、
それを回避する方法を伝えながら、
離れたところからでもできる対策を考えながら、
しっかりと手を離してあげらる親になりたい。

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