成功確率の高い戦略的B2Bスタートアップ立ち上げ方法
はじめに
Lenny's Newsletterの複数の記事から成功したB2Bスタートアップが初期時点でどんなクライアントをICP(Ideal Client Profile)としてターゲットにし、最初の10人の顧客をどう獲得したかをまとめた上で考察を行ったところ、B2Bスタートアップ立ち上げ方法に関して自分の過去の失敗にも通じる陥りがちな罠や驚くべき事実が見えてきました。一つだけ結論を先に言うと、B2B事業の立ち上げの際、最初にアイディアを練ってはいけないという事実がわかりました。どんなステップで事業を立ち上げるべきなのか、成功確率の高い戦略的なB2Bスタートアップの立ち上げ方法は何なのか、順を追って説明していきます。成功したB2Bスタートアップの先行事例は以下の通りです。
ファクト整理
まず前提として成長後はGusto以外の全ての企業がエンプラとSMB両方をターゲット顧客にしています:
しかしながらほとんどの企業は初期時点では、SMBのテック/ソフトウェア系スタートアップ企業をICP(理想顧客)として設定しています:
そしてこれらの初期顧客のほとんどを個人の繋がりで獲得しています。主に個人ネットワーク+フォロワー+投資家の繋がりをメインとして、スパイス程度にアウトバウンドで顧客を獲得しているといったイメージです。
サマリー:
ほぼすべての企業は成長後はSMBからエンプラまで幅広く顧客にしている
一方で初期のICP(Ideal Customer Profile:理想的な顧客プロフィール)のほとんどは小規模から中規模のスタートアップもしくはソフトウェア企業(非テクノロジー/非ソフトウェア企業を初期のICPとして成功している企業はかなり少ない)
初期の10人の顧客の獲得方法の多くは個人のネットワーク(友人+フォロワー+投資家)によるものである。コールドアウトバウンドがこれに続くがスパイス程度。
これらのファクトから、最終的にエンプラをメインにするにせよ、SMBをメインにするにせよ、非テック企業に顧客を広げていくにせよ、成功確率の高いB2Bスタートアップを立ち上げるのであれば、初期の立ち上げフェーズでは、
個人のネットワークで繋がった
小中規模のスタートアップ/ソフトウェア/テック企業を顧客にすべき
ということがいえます。なぜこういった集計結果になったのか、私自身のスタートアップ経営者としての経験も交えて考察を行いたいと思います。
1. なぜ個人のネットワークで繋がった人を顧客にすべきなのか
個人の繋がりが重要であるという点については、結局のところ、友達になってないような自分とは違うタイプの人の課題のことなんて理解できないし、友人でない人の課題の解決にモチベーションは湧かないということなのだと推察しています。事業の立ち上げは本当に大変な作業です。イーロンマスクは「会社を立ち上げることは仕事に強く駆り立てられる必要があり、かなり高い忍耐力が求められる。深淵を見つめながらガラスを食べるようなもの」と言っています。地獄のような苦しい時間が長時間続くのですが、そんな苦しいことを自分が共感できないような人、友達にもなれないようなタイプの人相手にできるのかというと、そんなことはできません。顧客中心主義なんてものをあらゆる顧客相手に実践できるなんて思わず、友人中心主義としてB2Bビジネスを始めるべきでしょう。その方がモチベーションが沸きますし顧客との会話も深いものになり、顧客の課題理解が進みます。事業を立ち上げる際はアイディアを考えてからそのアイディアの顧客となりそうな人達を後から見繕うのではなく、まずは先に手助けしたい友人を想定し、彼らが抱える課題やささりそうなソリューションを考えるという順番で事業の構想をするべきなのです。
2. なぜ小中規模のスタートアップ/ソフトウェア/テック企業を顧客にすべきなのか
そして小中規模のスタートアップ/ソフトウェア/テック企業を顧客にすべき理由は、以下のような理由に尽きるでしょう。
テクノロジーに対してリテラシーが高く、テクノロジーを使った改善や成長意欲が高い
資金調達をいキャッシュを持っている企業が多い
意思決定が迅速で予算が柔軟
非テクノロジー企業や年齢層が高い業界、大企業などはテクノロジーに対するアレルギーや、現状維持バイアスもかなり強いです。また、こういった企業の多くは実際の自社の課題というよりも、業界の雰囲気であったり権威性であったり、先行事例を見て導入を決めます。老犬に新しい芸を教えることはできないということわざが英語圏にはありますが、やはり若い人、若い企業を初期のターゲット顧客にすべきなのです。なのでまずは課題を改善したいと思っている話の早いスタートアップで十分な事例を作ってから、非テクノロジー企業にアプローチしていくことが得策となります。
B2Bスタートアップの立ち上げステップ
以上のデータと考察から成功する確率の高いB2Bスタートアップの立ち上げステップを導きます。
事業立ち上げの落とし穴:アイディア先行アプローチ
一般的に事業の立ち上げステップを以下のように考えている人が多いかと思います。
事業アイディアを考える
初期のICPの仮説を立てて顧客と話し、アイディアを検証し、アイディアとICPをブラッシュアップする
実際に有料顧客を獲得する
しかしながらこれは実際に良い事業の立ち上げステップとは言えません。なぜならこの方法だと事業アイディアが顧客に先行してしまっているからです。実際の正しいステップは逆で、アイディアの前に顧客を想定する必要があります。成功しているB2Bスタートアップのほとんどは個人のネットワークで繋がったスタートアップ企業を初期顧客として獲得しているので、アイディアよりも何よりも先にまずは自分が繋がっているスタートアップ企業のことを思い浮かべ、その人たちがどんなことに困っていそうか考えるところから始めなければいけません。そんなネットワークが無いというのであればネットワークを作るところから始めなければいけません。ここでこのネットワークに馴染めないようであればそもそも成功するB2Bスタートアップの立ち上げはかなり難しくなることでしょう。戦略的に成功確率の高いB2Bスタートアップを立ち上げるのであれば以下のステップをふむべきでしょう。
成功確率の高い戦略的なB2Bスタートアップの立ち上げステップ:ネットワーク先行アプローチ
戦略的に成功確率の高いB2Bスタートアップを立ち上げるのであれば以下のステップをふむべきでしょう。
ネットワーク構築:まずはテックスタートアップ企業や投資家とネットワークを作り友達になる。もしくはオンライン上で情報発信を行いテックスタートアップや投資家関係者のフォロワーを獲得する。
ICP/課題/ソリューションを検討:1で得た友人やネットワーク、フォロワーの人たちの中で本当に助けたいと思う人を初期のICPとして思い浮かべ、彼らが困っていそうな課題を探り事業アイディアを考える。
ICP/課題/ソリューションの検証:ネットワーク上のICP達と会話をしていき事業アイディアを検証し、ICPとアイディアをブラッシュアップする。ICPとして検討すべき事項:企業規模/役職/課題/会社独自の働き方/テックスタック/ビジネスのタイプ/価格帯
初期顧客の獲得:実際に有料顧客を獲得する
重要な洞察とまとめ
B2Bスタートアップの成功は、強固な個人的ネットワークの構築から始まります。アイデアを最初に考えるのではなく、潜在的な顧客との関係を構築し、彼らの具体的なニーズを理解することが重要です。
アイデアよりも顧客関係が先: 成功するB2Bスタートアップの多くは、アイデアを考える前に強固な顧客関係を持っています。これにより、実際の市場ニーズに基づいたソリューションを開発できます。
ネットワークの重要性: 個人のネットワーク、オンラインフォロワー、投資家のつながりが初期顧客獲得の鍵となります。これは、信頼関係と理解が深い相手とビジネスを始めることの重要性を示しています。
初期ターゲットの絞り込み: ほとんどの企業が初期のICPとして小規模から中規模のテック系/ソフトウェア企業を選んでいます。これらの企業は新しいソリューションに対してオープンで、意思決定が迅速である傾向があります。
段階的な拡大: 初期は狭いターゲットに集中し、成功後に顧客層を拡大するアプローチが効果的です。多くの企業が成長後にSMBからエンタープライズまで顧客を拡大しています。
顧客中心のアプローチ: アイデアから始めるのではなく、まず顧客のニーズを深く理解することから始めることが重要です。これにより、本当に価値のあるソリューションを開発できる可能性が高まります。
参考記事:
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