見出し画像

【 007 猿の手を持つ悪魔 (デヴィル・メイ・ケア) 】(2008)

今年はがんばって読書するぞ!

と意気込んでいる。
やっぱり色んなSF小説を読んで更に知見を広げたい!そんな事を毎年思って本を買っては積んでいた。だけど今年はちょっと趣向を変えたアプローチをする。

今までは初っ端から明治の文豪作品やら1ページの密度が濃すぎるSFやらハードルの高い小説を読んでは圧倒されて断念するパターンが多かったし、読む時間を決めることもしなかった。これがよくなかった。
今回はまず今ハマっているアニメのラノベから読み始め、寝る前にスマホを覗くのをやめて本を読む時間にしたりと、本を読む習慣をつけるところから始めた。
そんなこんなで最初の3冊はライトなノベルだったこともあってすぐに読み終わり、やっと本格的にSF小説を…と、思ったけどSF小説と同じくらい読みたい小説があるではないか。そう、我らがジェームズ・ボンドの007シリーズだ!
恥ずかしながら007の小説シリーズは全く読んでいない。ここはこの読書習慣を利用しない手は無い。大好きな007なら読書モチベーションを保つことが出来る!( あとノータイムトゥダイの記憶を上書き出来る。)

ボンドvs猿の手を持つ悪魔!

そんな訳で、読んだのが小説ではシリーズ36作目、2008年発売のセバスチャン・フォークス著「猿の手を持つ悪魔 ( 文庫版はデヴィル・メイ・ケア )」
「なぜイアン・フレミングの原作から読まないの!?」と思われるでしょう。家にあるのがこれと、白紙委任状しかないからです…思えば、先にカジノロワイアルをちゃんた買って読めばと若干後悔しております。

さて、そんな本作の舞台は人間が宇宙へ飛んで、ベトナム戦争真っ只中な1967年。既に幾多の死線を乗り越えてきたボンドがそろそろ引退なんかを考えて黄昏ていた頃にMからある男の調査が舞い込む。その男ユリウス・ゴルナーは製薬会社で財を成した男だが、裏ではイギリスを深く憎み、世界的な麻薬の流通網を使って何かを企んでいる、そして彼の特徴は右手は猿のような手なのだ!!!乳首が三つの男もいるのだ、手が猿の男だってそりゃいるでしょ!

まぁあらすじはなんとも007らしく決めているが、小説の007は映画とはだいぶ違う印象だ。物語の主観はほとんどボンド目線と心情で世界が広がる。彼が何を思い行動しているかが映画よりもわかりやすく描かれている。やたらホテルの食事を気にしたり、引退の事を考えたりと映画では見られないボンドの心を読むのが面白い。というかカクテル以外にもこんなにこだわりの強い男だったのね。

本編はお馴染みのボンドカーやQの秘密兵器など出番はないけれど、何度も突然ボンドの目の前に現れる魅力的な謎のボンドガールであるスカーレットやお馴染みのCIAの友達フィリックス・ライターも登場するし、時折ボンドが過去の激戦を回想するのも嬉しい。小説は初だが読めば読むほどボンドらしさが滲み出ていて嬉しい。

007ノベル初心者だから当初は細かなブランド描写や、地名情景に戸惑ったけれど慣れると面白くなる。わからなければ即スマホで調べられるのだから良い時代だ。
そして本作の見所…ではなく、読み所としてはボンドが敵を知るために敵ボスのゴルナーと賭けテニスをするシーン。今まで映画でも敵とは公衆の場でカジノやら謎ゲームやら何かしらの手合わせをする展開はあったけれど、テニスは流石に映画では出来ない小説らしいチョイスのバトルで心理戦と敵のインチキも混じってとても熱いシーンだった。

そういえば小説は読むとやはり頭の中でこの小説のボンドをイメージする。当初は僕の好きなピアース・ブロスナンで行くぞと思ったけれど、このこだわりの強さ、物腰の柔らかさ、洒落た感じはブロスナンではない(完全に主観)どちらかと言うとロジャー・ムーアだ。うん、ロジャー・ムーアだよ(主観です)

そして後半の展開で例の如くボンドが敵に捕まるシーンからは暴力的な描写が激しくなり、敵の暴力性がいつも以上に強く描かれているので映画ではあまり見ない血生臭いボンドの戦いが展開する。例の如く華麗に危機を脱出するかと思いきやボロボロになって苦戦に苦戦を重ねるのでなかなか緊張感たっぷり。ここは非常にダニエル・クレイグ感があるかもしれない。ただこのボンドはあまり秘密道具を駆使しないのが残念だ。だけどボスの傍らにはお決まりの強敵も用意されている。
終盤もギリギリの逃避行は映画のボンドでは見ない展開で驚いてばかりだった。
そして最後の展開はなんともボンドらしい面白さで締めるのも嬉しい。こうでなくちゃ。

そんな訳で最初は読むのがちょっと大変だったけれど、最終的にはショーン・コネリーやロジャー・ムーア時代の往年のボンド映画を見ているような感覚で楽しく読むことが出来た一冊でした。これから007小説もたくさん読んでいきたいな。


DATA

007 猿の手を持つ男(デヴィル・メイ・ケア)
出版社:竹書房
発売日:2008年12月31日
著者:バスチャン・フォークス



いいなと思ったら応援しよう!

【ゲーム感想】えすえふ
映画鑑賞と積みゲーの資金となります…たぶん

この記事が参加している募集