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濃厚濃密九龍体験【 クーロンズ・ゲート -九龍風水傳- 】(PS1)

陰界の九龍城出現!四神の見立てを行え風水師!

冒頭からさっぱりわからない冒険がはじまった。しかしそんなわからない事は本作では当たり前、これからもっとわからなくなるし、それを気にすることもなくなる。
そんな本作「クーロンズ・ゲート」は97年にSCEではなくソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)から発売されたアドベンチャーゲーム。不気味で豪華な化粧箱に、ハードカバーのブックレット、そして分厚いディスク四枚組のケースは中古ショップじゃ名物だったが、今回満を持してプレイ。これが想像以上に面白かった。

主人公の風水師は四神を見立てるために魔の都・九龍城へ出向く。

ゲームとしてはMYST的なプリレンダで作られたCG空間を探索し、移動にムービーを挟む古典的なアドベンチャーで、時たまポリゴンで作られたダンジョンを攻略するという内容だ。正直アドベンチャーゲームとしては移動してフラグを立てての繰り返しでヒントも少ないので頻繁にイベント総当たりになって結構しんどいうえに、ポリゴンのダンジョンはグラフィックが簡素な上に特徴がなく複雑で迷わせる作りなので攻略はかなり大変だ。そのうえ普通に3D酔いするので酔い止めは必須だった。
なので今回は早々に自力でのクリアを諦め、攻略サイトを見ながらのプレイにした。正直攻略を見ないでプレイしたら今回の5倍以上のプレイ時間を要していただろうし、正気も失っていただろう。それに攻略サイトを見ていても結構大変だった。

地図を見るだけで気が遠くなる、迷ったら一生迷い続けそうなリアルタイムダンジョン。

しかしそんな古風で大変なゲームなのだけど、それでも遊べたのは本作がかなり特殊な世界観が魅力的だったからに他ならない。この類のイカれた雰囲気を持つゲームというのは、狙って作ってやろうとすると、その魂胆が垣間見えてバレてしまうし、そうなると大概面白くないものになってしまうのだが、本作に関しては発売から20年以上経った今でもビジュアルとテキストには風化しないイカれっぷりと新鮮な驚きに満ちていた。

街並みの作り込みは凄まじい。

しかも今見てもプリレンダCGのグラフィックの質はかなり良い上に、声優陣も青野武や速水奨、小杉十郎太、千葉繁とかなり豪華。声優たちの普通じゃ聞けない怪演が聞けるのも面白い(千葉繁のテンションの乱高下が凄まじい喋り方や、様子がおかしい小杉十郎太など他じゃ聞けない!)
アドベンチャーパートである「JPEGダンジョン(名前が最高)」のその九龍城の無軌道に作られ複雑に入り組んだ建物内を探索する感覚は楽しいし、看板から建物の隙間まで隅々作り込まれているので、見どころたっぷりだ。

出てくる登場人物もビジュアルはどれも怪しく、奇抜な連中ばかりだ。(惜しいのはパッケージの連中が比較的まともな連中なところ。この人たち本作の中ではビジュアル的にかなりマシなんだよね…。)
敵となる「鬼律(グイリー)」や、邪気により体が変異してしまった九龍城の住人「妄人(ワンニン)」などのビジュアルはどれも奇抜で、出てくるたびに驚くし、一目見たら忘れられない。セリフやテキストも個性的で狂気的だ。

序盤に登場する妄人「錠前男」ビジュアルが奇抜すぎる。

そして世界観は、現実と似た世界ではあるけれど倫理観、常識などは一切通用しない。そんなめちゃくちゃのように見える中にも独自のルールと摂理が働いているので、どこか納得してしまう不思議な力が働いている。
そのおかげで驚くのは初めのうちで、徐々に「まぁここならそんな事もあるか」と、この異様さに慣れてしまう感覚も味わえるぞ。
またインターネット文化も発展しており、チャットやメール、広告なんかも拝める。こりゃ天然のvapor waveだ!

このいかがわしさが最高
広告ページことハッピーアワー。怪しすぎる。

深淵に誘う超特盛九龍体験

そんな奇抜な九龍体験をさらに濃密にさせるのは4枚組のディスク。この類のゲームは大体ムービーシーンなどを多用するおかげで、あっという間にゲームが終わってしまうのだが本作は違う。マジで長い。攻略を見ても十分に長い。なんだかんだクリアまで約25時間程かかった。この類のゲームでは大長編だ。

メインとなるお話も、冒頭の目的である四神獣の見立ての話からどんどん逸れに逸れまくっていくので一体全体自分が今何をしているのかさえ不安になってくる。
おかげでクーロンズゲートの世界観がただの一発ネタのように見えて、次々とプレイヤーが想像し得ない方向に話が終わりなく展開していくので、その果てしなさに当初は「本当にこの話ちゃんと終わるのか」と思っていたが、それもだんだん続いていくうちにどうでもよくなり、夜黙々と遊びながらだんだんと独特のふわふわとしたトリップ感を感じるようになってくる。
なるほど、さすが今でもファンが多いわけだ。

しかも次々と新しい街、新しいキャラ、新しいヤバい事が起きるので毎度毎度新鮮な展開が起こるので飽きることはなかった。
ホラーゲームではないけど、シュールな雰囲気でバイオレンスな展開が多く、文鳥は破裂するし、亀の頭はもぎとられるし、人は溶けるし、どうみても性器を意識したデザインのキャラクターは出てくるしで普通にびっくりするぞ。やりすぎだ。
そんなわけで攻略を見ながらになるが、次々と「まぁクーロンズゲートなら仕方ない」と思えるような事が起こるので最後の最後まで飽きずにプレイする事ができました。

強烈なビジュアルのキャラが次々と登場する!

そんなわけで本作はストーリーもビジュアル、そしてボリュームも自分の想像を遥かに超えるゲームでした。ゲーム部分は今遊ぶとだいぶ古風で、遊びにくい作りではあるけれど、それを含めて独特の体験ができるので総じて新鮮な経験でしたね。素晴らしいゲームです。


DATA

KOWLOON'S GATE クーロンズ・ゲート-九龍風水傳-
発売 / 開発 :ソニー・ミュージックエンタテインメント
対応ハード:PS1、PS3(ゲームアーカイブス版)
発売日:1997年2月28日
ジャンル:アドベンチャー


注意!以下の文章はネタバレを多く含みます!

クーロンズゲートは見どころたっぷり。なので好きなキャラクターやシーン、鬼律について語るぜ。

好きなキャラクター

チャーリー

ウッヒョッヒョーイでハッピー至上主義な陽キャ感溢れる立ち振る舞いだけれど、セリフの節々に素が見え隠れするので個人的にはかなり好き。こういったキャラクターを一つの側面で済ませないのが本作の魅力。声優もあのトリビアの泉の司会もされていた八嶋智人氏というのだから驚きだ。

九龍フロントの路人の二人

名はないけれど、案内屋の向かいにいる二人組の路人もかなりドラマのある。当初はスネークに刃向かう言動もある疑心暗鬼であるが、途中から何かあったようで洗脳されたかのような敬語の喋り方になるのが最高。そこからさらに様子がおかしくなっていく様は結構ゾワゾワしました。

シンバル女

もののけ使いの一人で出番もとても少ないのだが、喋り方のイントネーションが激しすぎてインパクトは絶大。面白すぎる。めちゃくちゃ好き。

・・・・・

ゲートの先にいる謎の男、ゲームの進行上忘れ物をしていると教えてくれるが、名前から全てが謎のままだった。一体何者なんだ…。

好きなシーン

呪われたウェイ

あんなに強者感あったウェイが突然バラバラになって壁から出てきた時には驚いた、しかも精神的にも壊れかけていて結構怖かった&面白かった。こんな事が起きるからクーロンズゲートはたまんねえ。

桃児から飛び出す梁艾丹

丸呑みだったの!?しかもそう飛び出すの!?…さすがクーロンズゲート…。

囚われのグエン・グエン

中盤のグエン・グエン。ボスに誘拐されて囚われたり、出世石にプレイヤーの旅の安全を願うなど、良い具合にヒロインムーブをかますオッサンで新すぎて良かった!!にしてもこの辺りのピアス屋といい、みんないい人ばかりでホッコリします。

踊る妖精さん

一体俺は何を見せられてるんだ…。

好きな鬼律

風扇狗

モノに足が生えているのが好きなのです。動きも可愛い。

木箱頭

これも上記と同じ理由になるけど、表情も良い!

竜頭玩偶

他の鬼律に比べるとだいぶ普通なビジュアルだけど、動きも可愛いし、見た目もロボット感が強く普通にプラモが欲しいぞ。

最後に

にしてもあの終わり方は一体何だったのでしょうか…。最後の最後まで分からない事だらけ。しかしまぁそれもクーロンズ・ゲートなのかと思ってしまうのでした。
とりあえずPS4で登場したクーロンズゲートVR suzakuはいつか遊んでみたいですね。

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