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【業界研究】マンション管理業界〜生き残りのカギは信頼関係?〜

今回はマンション管理業界について、調べたことをまとめてみました。

業界定義

マンションやビルのオーナー(所有者)から委託された建物の維持・運営管理を行う事業です


市場規模

矢野経済研究所の調査によると、2018年の市場規模は以下の通りです。

 -マンション管理費市場規模:7,459億円(前年比2.9%増)
 -背景・要因:新築分譲マンション竣工戸数は微減、新築分譲マンション価格の上昇に連動した管理費の上昇

 -共用部修繕工事市場:6,693億円(前年比7.8%増)
 -背景・要因:修繕工事適齢期を迎えるマンションストック数の増加、及び工事単価の高騰が継続

特徴

不動産管理業界の動向は、不動産市場の景気動向に左右されます。日本の不動産市場は少子高齢化や空き家問題で、市場そのものの拡大は望めないですが、老朽化した物件が増えていて、修繕工事の必要性は高まっています。

不動産管理業はサービス面での差別化が図りづらく、人材集約型のしごとなので人件費の占める割合が高いです。その結果、景気に大きく左右される事業でもあります。

主要企業

ざっと主要な企業はこんなところになります。また後日、詳細は調べて追記しようと思います。

①イオンディライト
②東急不動産HD
③共立メンテナンス
④日本ハウズイング
⑤日本管財

営業手法

営業手法については大きく3つに別れます。

①管理戸数を増やす:新規営業

物件を自主管理をしているオーナーに対して営業活動を行います。独立系企業は新規営業が必須ですが、グループ系企業は同グループのデベロッパーや不動産仲介業者が販売した建物の管理が主となるため、新規営業は少ないです。

②入居者を増やす:代理店営業

管理物件に入居者を集めるため、近隣の不動産会社や金融機関へ自社の紹介を依頼します。そのため、代理店営業(に近い)動きになります。入居者を集め、オーナーからの信頼を得ることで継続的な取引につなげることが可能です。

③既存マンションを維持・運営管理する:ルート営業

管理組合の定期的な集会への参加やマンションから出た問い合わせ(クレーム)に対応します。組合との関係性を良好なものにしつつ、継続的な取引や定期的な修繕工事による収益につなげる事が必要となります。マンション管理業はここが最もメインです。

業績ロジック

業績を計算式に落としてみるとこんな感じになります。かなり削ぎ落としているので、不足が多いという点はご容赦ください。

売上 = マンション管理費 + 修繕工事費
  マンション管理費 = 契約戸数 × 契約単価 × 継続期間
  修繕工事費 = 修繕工事数 × 単価

上記のロジックを踏まえると、選択肢としては(1)契約戸数と(2)継続期間。この2つを上振れさせるための戦略が必要になるんじゃないかと思います。

業界の課題

マンション管理業界では、2つの高齢化が問題視されています。

①建物の高齢化

2つの高齢化の1つは建物の高齢化です。建物の高齢化が進むことによって、修繕工事が必要となる建物が増えます。修繕工事自体は業績ロジックで見ると売上につながるため、プラスのように思われますが、そこで直面する問題が、修繕工事費の不足です。

マンション管理会社は、組合員から「修繕積立金」という形で費用を集めています。ですが、修繕費用が想定より高くつくと費用が不足するため、自社の利益率が低くするか、修繕工事費を追加徴収する必要があります。森トン、企業としては後者を選びたいところですが、そのためには組合員さんとの交渉が必要になるため、そう簡単には行きません。

②居住者の高齢化

2つ目の高齢化は居住者の高齢化です。居住者の高齢化が進むと、体の不自由や認知症などによりトラブルが発生しやすくなります。マンション管理会社はそれを防ぐためにサービス・設備の拡充を試みます。しかし、これも費用がかかることはもちろん、組合での合意形成が必要になったりとなかなかうまくは進みません。

③人手不足

マンション管理の仕事は、住民からのクレーム対応などが多くストレスがかかります。なおかつ待遇もそこまで良い職種ではないため、就活生からの人気がなく、人手不足が問題となっています。そこで各社は業界の魅力度を高めるための活動を行い、女性や若年層の採用を強化したり、物件管理をIT化、自動化することにより、人が少なくても業務が回るよう改善を進めています。

今後の展望

市場規模のところで見たとおり、マンション管理業界は不動産市場に大きく左右されます。そう考えると、今後、国内での管理戸数が大きく増えていくということはないように思えます。

マンション管理業はメーカーほどではありませんが、規模が大きければ大きいほど、巡回の効率が上がったり、管理ノウハウが溜まったりと、ある程度のスケールメリットは享受できることも言えます。

結果として、今後生き残るのは(1)中小管理会社を買収してスケールメリットを発揮する大手(2)管理組合との強固な信頼関係を構築する地域の中小企業と言えるのではないでしょうか。

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