性科学を学ぶ-その5-生物心理社会モデル
今回は、「Sexology the basics」の1章”性科学とは何か?”から、『生物心理社会モデル』を学んでいきます。
生物心理社会モデルとは?
1つの視点(例えば、生理的に〇〇だから◇◇なんだ。いつも▽▽と感じてしまうから□□なんだ)ではなく、3つの視点が重なる部分に、人の性的な行動や態度、あるいは性の問題が生じる。複眼的に見ることが大事、ということでしょう。
とはいえ何のこっちゃなので、性におけるモデルを図にしてみました。
レスをモデルに当てはめてみる
具体的な性の問題、悩みをモデルにあてはめてみます。セックスレスの悩みだとどうなるでしょうか。
生物的要因・・・妊娠出産期におけるホルモンバランス変化による性的欲求の低下、加齢による性機能の低下(勃起、膣潤滑等)、仕事・家事・育児・介護等による身体的疲労
心理的要因・・・過去の性的経験から生じる不安や嫌悪感、パートナーに感じる魅力の低下、信頼関係の破綻
社会的要因・・・恋人・夫婦にはセックスがあって然るべき、男性が誘い女性は応じるもの等の価値観、SNSや投稿動画などのエンタメが気楽でセックスはハードなコミュニケーションという文化的環境
これらの要因は、私個人の経験やこれまでに得た知識(書籍や聞き取り等)から、ざっと挙げたものに過ぎません。ただ、ある特定のレス状況に対しても、1つの要因ではなく、生物的、心理的、社会的な要因が組み合わさっていることが少なくないのではと思います。
さらに考えられるのは、これら要因は時とシチュエーションによって変わるだろうということ。昨日OKだったものが今日はNGになるかもしれません(その逆も)。もう1つとしては、ある要因の変化が、他の要因にも影響するだろうということです。例えば男性のセックスがうまくできるかという不安(心理的要因)がED(生物的要因)を招くことは、まさに自分にも思い当たる経験があります。
生物、心理、社会という3つの視点で見ればあらゆる問題に対処できる、とは必ずしもならないとは思います。ただ、「とある性の問題の原因はコレだ。それさえ解決すればいいんだ」という直線的な思考に陥らないために、この生物心理社会モデルは、専門家に限らず当事者個人としても、脇に抱えておきたい考え方の1つだと感じました。
最後までお読みくださりありがとうございました。次回は『なぜ性科学が重要なのか?』について学んでみます。
参考文献
[1]Silva Neves 「Sexology the basics」Routledge社