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わたしの現在地 #5(中学生時代の性的イマジネーション)

プロフィール名を”きしなお”から実名にしました。今後ともよろしくお願いします。

今回はセックスレス事業編「近未来のセックスレス支援」について記したいと思います。


近未来のセックスレス支援

近未来というと少々仰々しいですが、「日本のセックスレスを半分にする」という目標に対してどんなアプローチが必要かを考えています。

レスの解消と予防について

最初に、セックスレスの「解消」の観点と「予防」の観点の2つがあることに気づきます。解消と予防のどちらもが、セックスレスを減らすために必要です。解消については、正直一筋縄ではいかないと思っています。セックスレス状態が続き、かつ一方が不満を持っていると、信頼関係やパートナーシップそのものにヒビが入っていることが少なくないからです。このような場合、カウンセリングのように個人の心の”ひだ”を汲みとるアプローチが最も現実的なのかもしれません。

一方で予防については、まだパートナーとのコミュニケーションも良好な状態であることが多く”歩み寄り”が期待できるため、レス解消よりも選択肢は多いのではないかと考えています。従って、日本のセックスレスを半分にする、を現実にするには、レス予防の側からのアプローチも欠かすことがてきません。

レス予防の究極は性教育になるのだと思います。しかし、私はまだそこまで大きな視点に立つことができません。目を向けられるのは、例えばパートナーと付き合っているけど、セックスが楽しい時期は過ぎ、少しレス気味になってきた、というレスが忍び寄りつつあるカップルのレス予防です。

前提をお話したところで、レス予防の具体的なアプローチを考えてみます。

中学生の頃のような性的イマジネーションを育む

性的空想については文化的タブーがあまりに強いため、それについて話し合うと考えただけで、多くの人が不安と羞恥心に襲われる。けれども空想は私たちの心理的または文化的潜在意識の地図であり、その探求は変化を生み出すための必要不可欠なステップとなる。

『セックスレスは罪ですか?』エステル・ペレル著(高月園子訳)より引用

エロティックなバロメータ ~今と昔のオカズ事情~

現代では、スマホで調べ物をしたり、非アダルトなネット記事であっても、キャッチ―で直接的なアダルト広告が目に飛び込んできます。また、いわゆる「オカズ」のネタに事欠くことはありません。我々は有料無料を問わず、動画、コミックなど多くのオカズを簡単に手にして「消費」しています。これらのオカズは、性的な映像や画像を受け取ることで、反射的に性的な興奮が高められる種類のネタです。かくいう私自身も日常的にネタにしているのでこれらを否定することはできません。

アダルト広告や現代的なオカズが問題なのは、これらを取り込むことによっていわば「エロティックなバロメータ」がアップする機会は少ないだろうという点です。興奮して気持ちよくなって、はいスッキリ(以上)という消費的な用いられ方です。エロティックなバロメータとは、ここでは相手に快楽を与える術に長けていたり、フェチズムを多くあるいは深く持っていることを指していません。むしろ「セックスがしたい!」と感じる動機の大きさや、また肉体的な快楽への期待よりは「意識的な恍惚」への期待の大きさ、のようなことを差しています。このバロメータが上がることで、何年も連れ添ったパートナーとも、マンネリを打破してセックスライフを継続することができると思うのです。

そこで、「中学生のような性的イマジネーション」という比喩が登場します。私の中学時代は1995年前後です。現代の中学生ならスマホで手軽にオカズを手にできるのでしょう。しかし、当時はネット普及前でオカズが少なかった。例えば、通学路の道端に落ちているエ◯本に遭遇する(堤防沿いの道で、雨が降った後になぜかよく見つける)。当然持ち帰ることはできませんから、一瞬見えたページを網膜に焼き付ける。その後はイマジネーションを膨らませ、クラスメイトなんかと重ね合わせ、”もしかしたらあの子と。”なんてストーリーを仕立て、・・・と。元のたった1ページのネタを何日間も使いまわすことも少なくありません。

注目したいのは、思春期独特の性欲の強さでもない、”没頭”だけでもありません。僅かなネタを元に性的な創作を行うシロ・領域が大きくなることで、”じぶんに固有の性的な空想世界”がつくられること、その空想世界の体験を飽きもせず楽しみ続けられることです。この点が現代の直接的・消費的なオカズとは異なります。

「今日はしなくてもいっかな」への抗い

ではこの性的イマジネーションがどうセックスレス予防と繋がるのか。セックスレスの原因はご存知のように多様であり、かつ複数絡みあっていることが少なくありません。その原因の1つに、セックスへ向かう動機が(他の生活行動と比べて)相対的に小さくなることがあるように思われます。「んー、今日はしなくてもいっかな。(新作のマンガ見よう、SNSチェックしよう)」というような。中学生のような性的イマジネーションは、この「しなくてもいっかな」に対抗することができるのではないか。こういった期待があります。

対抗できると考える理由の1つは、「エロティシズムの筋トレ効果」です。エロティックな世界をイメージしない状態が続くと、セックスに向かう気持ちは中々湧いてきません。以前、私自身がセックスしなくていっかなという気持ちを経験した時期がありました。ふと考えると、その時期はマスターベーションもしていなかったのです。自らの日常にエロティシズムが存在していなかったと言えるのかもしれません。性的イマジネーション、その世界を楽しむことは、日常にエロティシズムを呼び起こす格好の筋トレになるように思われます。現代的なオカズも悪くないと思いますが、”はいスッキリした、以上!”だと筋トレ効果は薄いのかもしれません。

性的イマジネーションが「しなくてもいっかな」に対抗しうるもう1つの理由は、現実のセックスで自らの性的イマジネーションを実現してみたいという欲求です。ただし、性的イマジネーションは、それを現実化することが必ずしも約束されている訳ではありませんし、現実化を希望せず自らの内面だけで楽しむ場合もあります。例えば複数プレイのイマジネーションは、現実での実現は簡単ではありません。しかし、「もしそうなったら・・・」という要素がもしゼロならば、我々はイマジネーションを一つのエンターテインメントとして楽しむことはできないと思われます。

もう一つ付け加えると、現実化が難しいイマジネーションであったとしても、イマジネーションの中の相手(必ずしも現実のパートナーではないかもしれません)を、「性的な存在としてまなざす」ことは現実で行われるはずです。この1点だけでも、現実でセックスしたいという動機を生起させるのではないかと思われます。

性的イマジネーションを再び育む

最後に、ではどうやって現代の成人が中学生のような性的イマジネーションを取り戻すのか、にふれてみたいと思います。1つの方法として、「エロティック・テンプレート」という、"自らのエロティックな型"を理解するアプローチが挙げられます。

エロティック・テンプレート
エロティック・テンプレートは、性的な体験やエロティックな空想の記憶でできており、中には性的な行動を試みたものもあれば、行動に移さなかったものもあります。エロティック・テンプレートは、私たちのエロティックな心の中の、性的興奮やエロティックな力を持つすべての要素でできています。

「Sexology the basics」 (Silva Neves著)より引用・翻訳

引用元にした性科学の著作の中では、エロティック・テンプレートを知るために以下のようなワーク(問い)が挙げられています。

  • あなたが持っているすべての性的活動や性的行動の記憶の中から、最も良いものを選んでください。

  • あなたが持っているすべての性的ファンタジーのうち、最も良いものを選んでください。

  • この思い出やファンタジーを最高のものにしている大きな要素は何ですか?

  • この性的な出来事が起こったときに、あなたが覚えている感情はどんな感情ですか? 等々。

私自身このワークを一人で取り組み、具体的に書き出してみたとき、あぁ自分はこういう性的な世界観が好きなんだ、こういうことを実現してみたいんだ、という気づきがありました。

あなたの飛び切りの性的イマジネーションはどんなものでしょうか?

お話してきたように、セックスレス予防への1つのアプローチとして「性的イマジネーションを育むこと」の効果を考えてみました。では事業としてどのようにサービスの形にするのか、については残念ながらまだ具体的なアイデアはありません。まずはカウンセリングなどの機会を通じて、丁寧に個別に扱わせてもらった上で、サービスとして応用していくステップを踏む必要があると考えています。その時のポイントの1つとして、人の性的イマジネーションというものを、下ネタ的に茶化して扱うのでもなく、かといってシリアス過ぎるのでもなく、「エロいことを真面目に語る」というような、二律背反的なスタンスが求められるのではないか、そんな感覚を持ちながら具体化してみたいと考えています。


今回は、セックスレス事業編として、セックスレスの予防のアプローチとして、性的イマジネーションを育むという視点をお話させていただきました。

レス予防のもう1つのアイデアとして、「セックスにまつわるコミュニケーションを易しくする」というものがあります。が、今回は長くなってしまったので、次回の記事で続きを書くことにします。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。


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