TEPPANKING
私は鉄のフライパンを育てている。
鉄のフライパンって手入れができていれば、目玉焼きはツルン!と皿に移せる。
美味そうな焦げ目が付く。
焦げても金タワシでガシガシ落とせる。
使うほどに焦げにくくなる。育てている感があるのだ。
だが、妻は頑なに使おうとしない。
何故かと理由を問うと、鉄のフライパンは手入れが難しそう。テフロン加工は手入れが分かりやすいから。
ある日、鉄のフライパンを片付け忘れた。
流し台を見ると使いっぱなしのフライパンだけがあった。
手入れの方法が分からなかったからそのままにしておいたとのこと。
金タワシで焦げを取って、火にかけて水分飛ばして油を馴染ませるだけじゃないか。1分もあればお手入れ完了だよ。
しかし何度説明してもあなたが片付けてよ。
の一点張り。
その後も妻が鉄のフライパンに触れることはなかった。
なるほど、我が家の財布も権力も握っている妻が立ち入れないのが、鉄のフライパンというわけなのか。
それに気付いてから、私が台所に立つときはフフン♫と得意気に自慢気に上機嫌で鉄のフライパンを操る。