(短編小説)布団と戦う朝
(まただ…)スマホのアラームが耳元で鳴り響く。昨夜は遅くまで作業していたせいで、まだ体が重い。頭の中は霧がかかったようにぼんやりしていて、まぶたもまだ重たい。まるで、このまま布団の中に吸い込まれていくような感覚だ。
(あと5分…いや、10分だけ…)そんな甘い誘惑が頭をよぎるが、それが罠だと分かっている。スヌーズを押せば、その10分は瞬く間に過ぎ去り、さらに深い眠りに引き込まれてしまうだろう。
(でも、本当に今日は大事な会議があるのか?)考えが混濁してきて、現実逃避しようとする自分がいる。何もかも忘れて、このまま寝てしまいたい。(だが、それでどうなる?)頭の片隅で冷静な自分が問いかける。(会議に遅れたらどうなる?仕事を失うかもしれない。家賃も払えなくなる…)
無理やり自分を奮い立たせるように、深く息を吸い込む。布団の温かさが心地よく、まだ手放したくないが、ここで甘えてはならない。重たい腕を動かし、スマホを止める。そして、ようやく意を決して、体を起こす。(よし、今日も始めよう)床に足をつけると、冷たい感触が少しずつ目を覚ましてくれる。