見出し画像

心の中で展開する物語をダイナミックな舞台表現に拡張させてミュージカルの新しい扉を開けたような魅力的な作品に仕上がっている…★劇評★【ミュージカル=SUNDAY(サンデイ)(2020)】

 人は一面に同じ色や同質のものが広がる場所に立つと、心の裏地や本音、気付いていないふりをしていた真実などがあぶりだされると言われている。例えば、雪原や海、ラベンダー畑、あるいは砂漠などだ。推理小説の女王、アガサ・クリスティがメアリ・ウェストマコットという別名義のペンネームを使ってまで出版した小説「春にして君を離れ」の主人公は、ひょんなことからしばらく足止めを食ってしまった中東の砂漠の中で、この決して知りたくない真実に気付いてしまうのだ。旅先での心細さや暑さから来る疲労に加えて、目印になるものがない「壁のない迷路」のような砂漠こそがまさにそうしたリアルな幻想を生むのだが、その真実はだれかに暴かれたわけではない、自らの記憶の中にあるさまざまな出来事や記憶があるひとつのきっかけで結びついていき、恐るべき結論を自ら見出してしまうのだ。それはまっ昼間に覚醒しながら見る悪夢のように現実的で、一方では熱気の中に浮かぶ蜃気楼のようにあやふや。そんな内省的な物語を音楽座ミュージカルが日本発のミュージカルとして創り上げたのがミュージカル「SUNDAY(サンデイ)」である。2018年の稽古場公演を出発点に、コロナ禍での延期を経て、昨年2020年10月に稽古場公演、そして11月から12月にかけて大阪、名古屋、東京の各大都市公演が実現した。主人公の心の中で展開する物語をダイナミックな舞台表現に変えて、舞い、歌い、演技で綴ったミュージカルはミュージカルの新しい扉を開けたような魅力的な作品に仕上がっていた。(写真はミュージカル「SUNDAY(サンデイ)」の一場面。女学生時代を思い出すシーン。中央がジョーンを演じる高野菜々(撮影・二階堂健/写真提供・音楽座ミュージカル))
 ミュージカル「SUNDAY(サンデイ)」は昨年2020年10月31日~11月1日に東京・町田の音楽座ミュージカル芹ヶ谷スタジオで、11月12日に大阪・東大阪市の東大阪市文化創造館で、12月10日に名古屋市の名古屋市公会堂で、12月19~20日に東京・青山の草月ホールで上演された。公演はすべて終了しています。

阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも読めます。このnoteでは舞台写真は1枚だけですが、「SEVEN HEARTS」では7枚公開しています。
★「SEVEN HEARTS」のミュージカル「SUNDAY(サンデイ)」劇評ページ

★ブログは序文のみ無料で読めます。劇評の続きを含む劇評の全体像はこのサイト「note」で有料公開しています。作品の魅力や前提となる設定の説明。高野菜々さんや森彩香さん、広田勇二さん、井田安寿さんら俳優陣の演技に対する批評、音楽座ミュージカルの演出や舞台表現に対する評価などが満載されています。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無料でお読みいただけるサービスは2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

★ミュージカル「SUNDAY(サンデイ)」公演情報=公演はすべて終了しています

ここから先は

3,455字
この記事のみ ¥ 300

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?