「黒」という色が持つなんとも豊かな色合い…★劇評★【舞台】 黒蜥蜴(2018)
江戸川乱歩の描くヒールは何と魅力的なのだろう。その欲望にはとどまるところがなく、ほとんど人間として許されない範疇にまで振り切っている人間だというのに、人々の目を、心を惹きつけて離さない。ましてやその小説が三島由紀夫によって戯曲としてさらに耽美的に磨き上げられているのだから、観客たちはたまったものではない。しかも明智小五郎にはミュージカル界の貴公子、井上芳雄を、ヒールの優秀な手下、雨宮潤一には演劇の申し子、成河を、誘拐される深窓の令嬢には新進気鋭の相楽樹を、その父親には演劇界