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2024年9月の記事一覧
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官能的で神秘的な何ものにもかえがたい濃密な時間。どこまでも研ぎ澄まされていく文学的純粋に陶酔にも似た感情に包まれる衝撃的な傑作…★劇評★【ミュージカル=ファンレター(2024)】
ネットで文章を書き込んだことがある人なら誰でも、自分の文章が読む人に思いもかけない影響を与えることがあることを知っているだろう。私ももう20年以上前に、ネット上で知り合ったある人の相談に乗っている時に「こんなふうに決断してみたら」と書いたら、その人が私のアドバイスに従って1週間後に人生最大の決断をしてハワイに旅立ってしまったことがある。「あなたの言葉が決め手でした」と去り際に言われてドキリとしたものだが、その人にとってそれは決して不幸せな決断ではなかったことを今は知っている
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京本大我の真摯な演技は、変わりゆく時代のはざまに生きる若者の気概と苦悩、そして自由を求めた変革者の輝きを表現して余りある…★劇評★【ミュージカル=モーツァルト!(京本大我・香寿たつき・白石ひまり出演回)(2024)】
神童と呼ばれた人物はどんな時代にもいた。3歳にして漢詩をそらんじることができたとか、小学校にも上がらない子なのにドリブル突破の非凡さで欧州の名門クラブのジュニアチームからスカウトがあったとかなかったとか、時代や洋の東西を問わずその例には事欠かない。だが、残酷なことに神童が大成する保証はどこにもない。しかも、大人になったら才能や技術のレベルが上がっていないと、ただのうまい人だ。人類の歴史の中で神童と呼ばれた代表格のようなモーツァルトは実に特異な少年時代を送っている。父レオポル
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芸術表現の自由の獲得、そして古い権威との闘いに大いなる説得力を与えるパワフルな原動力を古川雄大のダイナミックな演技の中に確認できる…★劇評★【ミュージカル=モーツァルト!(古川雄大・涼風真世・若杉葉奈出演回)(2024)】
「天才」とは何か。それをミュージカルで探ろうとしたのである。なんという着眼点だろうか。天才だからアイデアは泉のように湧いてきて、けっして涸れることはない。依頼者のどんな難題にも対応し、たちまち作品を仕上げてしまう。そんなイメージを抱きがちな天才という存在を安易で順調なままの人生として描いたのでは何の説明にもならないし、クリエイティブな発想とは言えないだろう。そこで採り入れられたのが、天才のもとである「才能」という存在を取り出し、擬人化して、天才とされる人間の心の中に置いたの
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育成型オーディションで選ばれたビリーたちに宿る純粋さ。英国の「変化への渇望感」と少年の夢がリンクし多彩な要素がスパーク。…★劇評★【ミュージカル=ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~(井上宇一郎・益岡徹・安蘭けい・阿知波悟美・吉田広大・厚地康雄・豊本燦汰出演回)(2024)】
鉄の女サッチャーと炭鉱労働者たちの経済合理化をめぐる対立、そしてダンスに目覚めた少年とジェンダーと未来に保守的な町の男たちとの多様性をめぐる対立…。1980年代の英国で起こった今につながる変化のための対立を背景に、才能の目覚めと成長を描いたミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」が2020年の新型コロナウイルスの世界的流行による一部中止などの予想外の事態を乗り越え、今年2024年、2度目の再演が行われている。もともと劇場の芸術監督を務めていた生粋の演劇人である