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<エンタメ批評家★阪 清和>ミュージカル劇評数珠つなぎ

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阪清和が発表したミュージカルに関する劇評をまとめました。ジャニーズ関連のミュージカルはここには収容しません。音楽劇を入れるかどうかは作品ごとに判断します。
いま大きな注目を集める日本のミュージカル。臨場感あふれる数々の劇評をお読みいただき、その魅力を直に…
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2022年2月の記事一覧

欲望と闇が広がる時代に純粋に生きようとした人々の悲しくも美しい物語。目立つ浦井健治の充実ぶり…★劇評★【ミュージカル=笑う男(熊谷彩春出演回)(2022)】

 人間たちのただれた欲望と、それを取り巻く人々の心の闇が果てしなく広がる時代に、少しでも純粋に生きようとした人々の悲しくも美しい物語として2019年の日本初演から大きな評判を呼んだミュージカル「笑う男」が再演されている。大人たちに振り回されてきた主人公グウィンプレンを中止に、血のつながらない、純粋な心の絆で結びついた見世物小屋の仲間たちの物語は、あの「レ・ミゼラブル」や「ノートルダム・ド・パリ」を産み出したヴィクトル・ユゴーが階級闘争というテーゼも組み合わせて編み上げたことで

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May J.が表現する強さとしなやかさ、融合し、そして際立ち、出色の出来…★劇評★【ミュージカル=ボディガード(May J.・重松俊吾出演回)(2022)】

 人を守るとはどういうことなのか。それだけでも難しい命題なのに、しかもそれを職業にするとはどういうことなのか。ボディガードという存在に守られる人にとっても単なる報酬の支払いと身の安全とのバランスシートの問題ではないはずだ。かつて全世界的なヒットとなった映画のミュージカル作品『ボディガード』が2年前の日本人キャスト版日本初演の新型コロナウイルスの感染拡大による公演期間途中での中止という悔しい出来事を乗り越え、主要キャスト陣がいずれも堂々とした演技を見せている。中でもMay J.

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孤独が共鳴して生まれる絆。柚希礼音の圧倒的なカリスマ性がスーパースターの心情を見事に描き出す…★劇評★【ミュージカル=ボディガード(柚希礼音・重松俊吾出演回)(2022)】

 孤独は共鳴する。そんな当たり前のことを思い出させてくれる作品だ。ここには3つの屹立した孤独があって、共鳴することによって、時にはそれは絆や愛となり、時には理解しがたい執着にその姿を化けさせる。その絶対的な事実があるからだろうか、孤独は、どこかドライな業界もののような体裁もあるこの作品に通奏低音のように響いて人々の心を乱し、地鳴りのように状況を変えていく。柚希礼音はその圧倒的なカリスマ性によって、スーパースターの孤独に現実味を加え、心の震えを止められなかった主人公レイチェルの

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人形と人間は互いの映し鏡。泣けてくるほど愛おしい…★劇評★【ミュージカル=7dolls(2022)】

 これは人形たちと人間の心温まる交流の物語、ではない。人形たちは個性的で時に意地悪だし、人間の方だってかなり心が荒んでいるものだから、そうやすやすと心を許さない。なのにこの物語は私たちを妙に惹きつける。人間たちの営みが人形劇のように哀愁を帯びたコメディーに見えるし、人形たちは人間たちをも超越するリアルさで迫ってくる。両者は互いに互いの映し鏡。しょせん人生はそんなもんさとうそぶいてみたくもなるが、泣けてくるほど愛おしい瞬間もある。音楽座ミュージカルが磨き上げてきたミュージカル「

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