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<エンタメ批評家★阪 清和>ミュージカル劇評数珠つなぎ

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阪清和が発表したミュージカルに関する劇評をまとめました。ジャニーズ関連のミュージカルはここには収容しません。音楽劇を入れるかどうかは作品ごとに判断します。
いま大きな注目を集める日本のミュージカル。臨場感あふれる数々の劇評をお読みいただき、その魅力を直に…
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2021年1月の記事一覧

悲劇のスパイラルと生の歓びを歌い上げる奇跡のミュージカル…★劇評★【ミュージカル=パレード(2021)】

 社会派のミュージカルが珍しくない現代。しかしミュージカル「パレード」ほどの衝撃を与える作品は他にはない。それは「冤罪」という深刻なテーマを扱っているからという理由だけではない。人々の不信はさらなる不信を生み、どんどんと増幅することで、冤罪を疑う心さえ覆いつくしてしまう。その悲劇のスパイラルを人間のドラマとして「パレード」は鋭く刻み、生と死のざまでもがき、さまよう人間の尊厳の貴さをあらん限りの切実さで歌い上げる。一方で生きることの歓びと愛することの深遠さ、誇りを失わないことの

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心の中で展開する物語をダイナミックな舞台表現に拡張させてミュージカルの新しい扉を開けたような魅力的な作品に仕上がっている…★劇評★【ミュージカル=SUNDAY(サンデイ)(2020)】

 人は一面に同じ色や同質のものが広がる場所に立つと、心の裏地や本音、気付いていないふりをしていた真実などがあぶりだされると言われている。例えば、雪原や海、ラベンダー畑、あるいは砂漠などだ。推理小説の女王、アガサ・クリスティがメアリ・ウェストマコットという別名義のペンネームを使ってまで出版した小説「春にして君を離れ」の主人公は、ひょんなことからしばらく足止めを食ってしまった中東の砂漠の中で、この決して知りたくない真実に気付いてしまうのだ。旅先での心細さや暑さから来る疲労に加えて

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