マガジンのカバー画像

<エンタメ批評家★阪 清和>ミュージカル劇評数珠つなぎ

122
阪清和が発表したミュージカルに関する劇評をまとめました。ジャニーズ関連のミュージカルはここには収容しません。音楽劇を入れるかどうかは作品ごとに判断します。
いま大きな注目を集める日本のミュージカル。臨場感あふれる数々の劇評をお読みいただき、その魅力を直に…
¥777
運営しているクリエイター

2019年6月の記事一覧

光と影が絡み合いながら、互いを昇華させていく美しさに満ちた作品…★劇評★【ミュージカル=エリザベート(花總まり・井上芳雄・平方元基・三浦涼介・涼風真世・成河出演回)(2019)】

 かつてミュージカル「エリザベート」の劇評の中で、「陰影がとても豊か」と書いた。死や裏切り、逃避、愛の渇き、焦燥、はかなさなどマイナスイメージの強い要素で構成された作品であることを理由に挙げ、その要素が織りなす悲しみの陰影が「美しくにび色に輝く」という意味合いを込めた。確かにそれはこのミュージカルのひとつの部分を言い当てているだろう。しかしそれから3年経ってあらためて再演されているミュージカル「エリザベート」を見て、私は、闇の中の光がなんとも美しく輝いていることに気付いてしま

¥300

全編に漂う愛の飢餓感と生と死が乱反射する物語の構造を早い段階でよく理解しているフレッシュコンビ…★劇評★【ミュージカル=エリザベート(愛希れいか・古川雄大・田代万里生・京本大我・香寿たつき・山崎育三郎出演回)(2019)】

 ミュージカル「エリザベート」がこれほど愛されているのは、ただ単にファンがキュンとする勘所をきちんと抑えているからではない。「生」を「死」の側から見るという逆説的な視点がまずもっとも基本にあり、さらには死を司る黄泉の国の帝王トートと皇后エリザベート、そしてエリザベートと皇帝フランツという2つの愛を絡め合わせて描いていること、そして何よりもここでは愛はエリザベートにとってもフランツにとっても息子のルドルフ皇太子にとっても、トートにとっても、手に入れることの極めて難しい悲しみに満

¥300

深みのある味わいも強調され壮大な作品に…★劇評★【ミュージカル=グッバイマイダーリン★(2019)】

 「人形の家」や「台所のマリアさま」などの小説で知られる英国の女性作家、ルーマー・ゴッデンの名作のひとつで、児童向けながら大人からも絶大な人気を誇る「ねずみ女房」。2017年にこの作品をもとにしたミュージカルを初演した音楽座ミュージカルが、脚本や演出をイチから見直して新たなミュージカル「グッバイマイダーリン★」を創り上げた。初演が上演された稽古場「芹ヶ谷スタジオ」よりも大きな劇場での3都市(大阪・高槻、東京、広島)公演となり、舞台構成もスケールアップ。原作の持つ深みのある味わ

¥300