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<エンタメ批評家★阪 清和>ミュージカル劇評数珠つなぎ

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阪清和が発表したミュージカルに関する劇評をまとめました。ジャニーズ関連のミュージカルはここには収容しません。音楽劇を入れるかどうかは作品ごとに判断します。
いま大きな注目を集める日本のミュージカル。臨場感あふれる数々の劇評をお読みいただき、その魅力を直に…
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2019年5月の記事一覧

この物語こそまさしく禍福が縄のようにより合わされた人々の生の営みの集大成…★劇評★【ミュージカル=レ・ミゼラブル(佐藤隆紀・上原理生・知念里奈・屋比久知奈・海宝直人・熊谷彩春・駒田一・朴璐美・小野田龍之介出演回)(2019)】

 これほど練り込まれた物語も少ないだろう。中国や日本には古いことわざから由来する「禍福(かふく)は糾(あざな)える縄の如(ごと)し」という言葉があるように、より合わせた縄のように幸福と不幸、喜びと悲しみは表裏一体で、目まぐるしく変化していくということは私たちが自らの人生で日々実感していることだ。まさに真理に近い。だからといって幸せは続かないと嘆くこともないし、逆に逆境にある人にとっては反転攻勢への強い味方にもなってくれる言葉でもある。つまり、禍福とはまさしく人生そのもの、それ

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複雑に組み合わされたその運命から聞こえてくるのは、極めてシンプルなもの…★劇評★【ミュージカル=レ・ミゼラブル(吉原光夫・伊礼彼方・濱田めぐみ・唯月ふうか・三浦宏規・生田絵梨花・斎藤司・森公美子・相葉裕樹出演回)(2019)】

 運命という言葉があるが、ある一人の人間のことだけを考えるのであれば、それは大いなるうねりを持ったひとつの物語だ。しかしある瞬間に同時に生きている人すべての運命がジグソーパズルのようにぴたりとはまっているのだということを考えると、物語などという暢気なことを言っていられなくなるほど、事は壮大で重大だ。私は神を信じないし、せいぜい「(科学的な)宇宙の論理」を信じる程度だが、19世紀の最重要な小説家、ヴィクトル・ユゴーは、欧米人やキリスト教徒が言うところのそうした「神の摂理(あるい

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