治療から、リスクマネジメントへ
【ご報告】
今年の8月、noteを始めたきっかけは息子の怪我でした。
投稿を公開してから、我々親子へ本当にたくさんの励ましの言葉いただきましたことを心より感謝しております。ありがとうございました。
本日は、息子の治療が無事終了したことをご報告させていただきます。
あれから7ヶ月治療を続け、10月に4度目のMRI検査を受た結果、大人の手のひらほどあった血腫は完全に消えました。
おかげさまで息子はとても元気にしています。普通の生活ができて、蹴って走ることもできます。
ただ残念ながら、担当医からは先天性の「くも膜のう胞」がある以上、積極的に頭にボールを当てるサッカーへの復帰をOKとは言えない、2度目の出血は命に関わると伝えられました。
セカンドオピニオンを得た医師からも、血腫は完全に失くなり治療は終了しているが「くも膜嚢胞」は存在する。この状態であれば保存的治療を選択し手術は行わないが、ここから先は医学と切り離し一般的なリスク対策として考える必要があると説明を受けました。
ボクシングの場合のみ、くも膜嚢胞が発見された場合の明確なルールがある。
アメフトの場合、くも膜嚢胞があることによる参加制限は無いが、一度硬膜下血腫を発症したら復帰させない。
結論として、息子のように低年齢でくも膜嚢胞による硬膜下血腫を合併した事実がある以上、頻繁に、かつ積極的に頭にボールを当てるサッカーはリスクが高いので避けるべき、とのこと。
テニスや水泳などは問題ないが、柔道やラグビーなどコンタクトスポーツに参加してはいけない。
その他の競技については、選手と保護者、主治医、所属団体(競技団体)が相談して判断すべきとのことで、小学校の先生方にも症例と状況を説明をしたところ、体育の授業で避けるべきことを拾い上げ、リスク対策を一緒に考えていただけることになりました。
学校の先生方もこの症例について知らなかったと仰る方がほとんどで、投稿がきっかけで連絡を下さった日本サッカー協会の方からも、『くも膜嚢胞については知りませんでした。教えていただいて有難うございます』と言われました。
その後息子とも話し合い、悔いの残らないように4年生の終わりまでと期限を決めて、いったんサッカーに戻りました。
チームとも話し合い、ヘッドギアを必ず着け、試合の際には毎回私が付き添うこと、体調変化があったら本人の申告でいつでも交代をさせてもらうことをお互いに合意し、改めてメンバーとして受け入れていただきました。感謝しかありません。
今後、学年が上がれば当たりも強くなり頭部外傷のリスクも高まるので、親としてはこれが最大の妥協点だと思っています。
今現在、国内のJFA小学生登録選手は約27万人。公開されている医学論文によれば、くも膜のう胞を持つ患児の確率は全体の2.6%と言われており、およそ7000人にその可能性があります。
診察を受けた医師によれば、MRIなどの医療機器の進歩で、今後「くも膜嚢胞」の発見が増えていくと予想されているとのこと。
これは、JFAのルール発行を待たずとも知識があれば避けられるリスクです。
くも膜嚢胞が無かったとしても、成長中の子どもにとって頭部への衝撃に良いことはひとつもありません。
今後、スポーツの育成環境で息子のような怪我が繰り返されないことを切に願っています。
今回、息子の怪我を通してサッカーにおける様々な怪我や事故について学ぶ機会があり、くも膜嚢胞に限らず、成長途中にある子どもの身体にふさわしい練習量などについても保護者や指導者が知っておくべきことが多いことを知りました。
今後、同じような子どもを出さないためにも、選手や保護者がその知識を得て自発的に身体を守る必要性を痛感し、↓このようなオンラインコミュニティを立ち上げました。興味のある方はぜひご参加ください。
実態調査のため、スポーツドクターや看護士さんのアドバイスを受けながら作成したアンケート↓の回答も募集しています。ご協力いただければ幸いです。
以下、参考まで。
東邦大学医療センター大橋病院、櫻井先生、中山先生らの論文(P105〜)
http://www.neurotraumatology.jp/organ/backnumber/filedata/contents/vol40_2_2017.pdf
引用:
「ボクシングなど一部の競技団体を除いては、くも膜嚢胞を有する場合の規定を設けていない。コンタクトスポーツ前にメディカルチェックを行うことは受傷時の変化を評価する上で有用であり,積極的な施行が望まれる。
今回セカンドオピニオンを受けた医師がメンバーの一人でもある、日本臨床スポーツ医学会が作成した非常に分かりやすい資料がありました。育成現場、教育現場でのリスクマネジメントや知識の共有に使えると思います。
「頭部外傷10か条の提言」
https://concussionjapan.jimdofree.com/
症状の出ない無症候性くも膜のう胞の学童については、一般的には学校の体育は参加してかまいませんが、頭部への頻回の衝撃や転倒による頭部への頻回の衝撃や転倒による回転加速傷を伴いやすいコンタクトスポーツ(特にボクシング、空手、柔道、相撲、ラグビー、アメリカンフットボール、アイスホッケーなど)は避けた方がよいでしょう。
しかしスポーツ参加に関する明確な基準がなく、主治医と選手と競技団体の相談で決められているのが現状と思われます。急性硬膜下血腫や脳挫傷などの器質的病変の痕跡を認めた場合は、コンタクトスポーツへの復帰は、原則として許可すべきではありません。
体の他の部位に比べ頭部外傷の頻度は多くありませんが、選手の一生に関わることがあり、事前の、あるいは定期的なCTあるいはMRIを含めたメディカルチェックを行うことが望まれます。