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少年サッカー、そして怪我のこと vol.1

はじめに

 私は2人の子を持つ父であり東京都内に勤める会社員です。現在、小学4年生の長男が地域のサッカークラブで活動しています(現在は怪我のため休部しています)。

 全国の小学生世代サッカー人口(第4種に登録され公式戦に出られる児童)は、2019年時点で269,314人だそうです(JFAデータ参照)。

 少子化が進む近年においてもキッズスポーツの中では一番人気を誇っているようですが、私自身はサッカーにまったく興味がありませんでした。

 どのくらい興味がなかったかと言うと、息子が生まれてから3歳になるまでイギリスのリバプールという街で生活をしていたのですが、TV含め、まともにサッカーの試合を観たことがありませんでした(心から後悔しています)。

 息子がサッカークラブに入ったのは小学校1年生も終わりに近づく2017年末のことです。これから書くのは、息子がサッカーを始めてから現在に到るまでに起きた出来事の記録なのですが、私はプロアスリートでも指導者でもありませんし、熱烈なサッカーパパでもありません。

 このメッセージは、息子と同じようにサッカーを楽しむ子供たちとそのパパさんママさんに向けて、同じような問題に直面したときに少しでも参考になればと思い書きはじめました。

サッカークラブに入団

 小学校に入ってすぐにサッカーをやりたいと言い出した息子ですが、地元の小学校をベースに活動するいわゆる「少年団」の申し込み案内には、保護者へのリクエストが多過ぎて、出張の多い私と身重の妻、近くに祖父母もいないためすぐの入団は難しく、下の子の出産が終わって少し落ち着くまで入部を待ってもらいました。

 そして1年生も終わりに近づく12月、息子は念願のサッカークラブに入れることになりました。本人は大喜びです。

 チーム指定の遠征着、ユニフォーム、シューズ、ソックス、脛当て、ボールなど必要なものをすべて買い揃え、保護者同士、日々LINEのグループで情報交換し、お当番や車出し、遠征の付き添いなどを回り持ちすることになりました。

 我が家の冷蔵庫の扉は、小学校、サッカークラブ、PTA、学童クラブからのプリントなど、『無数の規則と注意とお願い』でたちまち埋め尽くされました。

車出しについては以下に詳しく書きました↓

 クラブは各学年を代表する保護者と、高学年保護者による事務局という組織で運営され、学年ごとに役員を選出しなければなりません(学年代表、広報、会計)。控えめに言っても共働きの夫婦には荷が重い。 

 勤務時間が変則的だったり週末勤務がある家庭、シングル家庭の子供たちがこういうクラブに入るのはかなり難易度が高いでしょう。

プレステか!?

 さて、チームにも慣れ、都内のブロック大会の応援に行ったときのこと。

 まだ低学年である2年生の試合なのに、息子のチームに限らず全体的にコーチ陣の声が大きく指示も多いのですが、それ以上に大人の私が言われたとしても凹んでしまうような暴言や罵倒の多さに衝撃を受けました。

 試合前後、ハーフタイムでも説教やダメ出しを延々と続けるコーチたち。怒られてうなだれ顔から覇気の消える子供たち。

 息子のチームにしても「指示が多すぎるなぁ、子供に自分で考える時間を与えて欲しいなぁ」と常々思っていましたが、大会で強豪と言われるチームでも試合中はずっとコーチや監督の怒鳴り声と指示が響き渡っていました。

 それはあたかも、コーチや監督が必死の形相でプレステのコントローラーを操作しながら子どもたちをコントロールしているような印象でした。

 「なんか時代、間違ってないか?主役は誰だっけ?」
 
 そして、毎回応援に行くたびに様々な疑問が湧いてきました。

 こうやって自分も言われるままに子供の「サポ活(勝手に命名)」をしているけど、様々な決まりごとや親のお当番は本当に必要なことなのか?

 子供が自分たちで考える力とその機会を大人が根こそぎ奪ってやしないだろうか?

 子どもにとってこれが当たり前になって大丈夫なのか?

 食べ物はおにぎりだけ数は3個までとか(なぜ自由に考えるのを制限するのだろう?)、

 食べる時間は厳守とか意味不明で理不尽なルール(人それぞれベストなタイミングがあるはずだ)、

 ひたすら子どもを怒鳴り続けるコーチング(ほんと、スポーツで子どもを怒鳴りつけるのはやめようよ)、

 それでいて始まりから解散まで何度も整列させてコーチや関係者、保護者への挨拶をさせる(混雑した駅の改札前に並ばせて終礼をやるのだけは今すぐやめた方がいい)。

 保護者によるコーチの飲み物や弁当の用意や、大人の管理都合の決めごとばかり。

 いったい誰が何のためにやっているのだろう?サッカー指導者とはいったい何者なのだろう(ごめんなさい、全てがそういう指導者ではないことは知っています)

 私の疑問はどんどん膨らんでいきました。そこで、今の子どもたちのサッカーを取り巻く状況はどうなっているのかを知りたくて、片っ端からジュニアサッカー、育成世代、小中学校の部活や様々なスポーツに関する本を買い求め勉強をはじめました。そして、色々なことがわかってきました。

 あくまで個人的な見解ですが、様々な事故や事件を知れば知るほど、日本のスポーツ育成環境は私が彼と同い歳だった40年前からそれほど進化していないか、もしくは部分的に後退している部分すらあるという印象でした。(つい先日も日本オリンピック委員会は、世界人権団体から選手の指導方法、体罰、虐待について告発を受けています)

メジャースポーツとマイナースポーツ

 ここで少し自分のスポーツ歴について触れたいと思います。

 学生時代は野球部と陸上部を掛け持ちするようなアスリートだった父、若い頃は重度の喘息でほとんど学校に行かず転地療養を繰り返していた病弱の母、という極端な組み合わせの夫婦のあいだに生まれた僕は、走ることもチームスポーツもまったくダメでした(父の身体能力はすべて妹に受け継がれたようです)。

 しかし1970年代に静岡に生まれたせいで、小学校3年のときに親友に強く誘われてサッカークラブに入ったこともありましたがまったく使い物にならず、1年持たずに辞めました。ですからサッカーには良い思い出がまったくありません。

 一方で、私はクルマやバイクのプラモデルを作ることが大好きでした(静岡にはプラモデルで有名な企業★★もあります)。

 時がたつとその延長線上としてエンジンに興味を持ち、バイクに出会い、そして当時大人気だったマンガ「バリバリ伝説」に影響を受けて、地元のカートコースで50ccのバイクレースを始めたのが中学3年生のときです。

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 バイクはスズキRG50ガンマ、お年玉を貯めた5万円で買いサーキットまで押して通いました。

 今もそれほど変わらないと思いますが、日本のモータースポーツは、サッカーや野球、テニスといったメジャーなスポーツに比べて、競技人口もビジネス規模も(F1やmotoGPを除けば)マイナー中のマイナースポーツです。モータースポーツをスポーツと認めない人だっています。

 そのなかでプロとして食べていける人は本当に僅かですが、1980年代はティーンネイジャーのあいだで空前のバイクブームが巻き起こり、競技人口が一時的に激増、90年代には日本人世界チャンピオンが次々と誕生しました。

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当時も今も憧れの坂田和人選手

 そして、私は15歳から毎日、朝から晩まで寝ても覚めてもプロライダーになることを夢見続け、21歳でハイサイド転倒による左膝蓋骨粉砕骨折、膝靭帯損傷するまで続けました(それまでにも骨盤にヒビが入ったり手足の指の数々や踵を折ったり)。

 思い返すと、自分が打ち込んできたモータースポーツの経済的な厳しさや危険度は半端ではなかったけど、競技中に怒鳴られたり(怒鳴られても聞こえないけど)、説教されたり、目的不明な練習や罰走を強要されたことは一切なかった。

 全てが自由で、練習メニューも試合の戦略も全て自分で決めることができた。

 コース上では自分より早いライバルの走りを研究し、思いつく限りのトライ&エラーを繰り返してコンマ単位でタイムを削ってゆく。

 同時に、道具であるバイクの整備や機能の調整もすべて結果に影響します。消耗品であるタイヤ、燃料、オイルやサスペンションの管理もしなければならない。事前の準備や記録すべきことが本当に多いスポーツでした。

 だからこそベストタイムが出たとき、レースで勝てたときの喜びは格別でした。私はバイクレースの虜になりました。

 「走りたい、レースに出たい」と思う気持ちはあったけど、誰かに「やらされてる」と思ったことも「こうしなさい」と言われたことも一度もありません。

 数年前にサーキットで転倒し、生まれて初めて脳震盪で一時的に記憶を失いました。その際に医師より脳へのセカンドインパクトの深刻さについて説明を受けたこと、その場に居合わせた当時6歳だった息子から涙ながらに「パパもうバイク乗らないで」と言われてバイクを降りましたが、今でもファンとしてレース観戦を楽しんでいますし、モータースポーツとの出会いは心から感謝していますし、今の仕事にも繋がりました。

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 そんなわけで、指導者がほぼ存在しなかったモータースポーツの自由な空気を胸いっぱい吸い込んだ私にとっては(おかげで正しいリアブレーキの使い方を大人なるまで知らなかったけど😅)、日本における少年スポーツにまつわる問題、というよりも日本の公教育と同種の違和感を感じざるを得ませんでした。

 時代が変わり世の中がどんどん変化していくなかで、日本の若者に対するスポーツ指導が(一部では)ほぼ変化していないことに驚きます。それはなぜなのでしょう?


続く。




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