第2話
あの日は、心身共に疲れきっていた。
長きに渡る残業のストレスと大きな仕事の重圧から無事開放され、その打ち上げで酔い潰れてしまった。
気付いたら終電も逃した後だった。
どうしたものかと、夜道をフラフラおぼつかない足取りで歩いていたらあの店に辿り着いた。
あれ?
こんな所にお店あったっけ??
表通りから一本裏道に入ったその奥に、そのお店はあった。
外観は、落ち着いた深い赤茶色のレンガ造りに優しく光るオレンジ色の街灯。
看板は無く、入り口の扉に店名がある普通のBarだ。営業時間が6時までとあり、始発まで過ごすには丁度良かった。
今思えば、あれは幻だったのだろうか??
ギィィィと木の扉が軋みながら開くと、品の良さそうな男性が立っていた。