第2話
何の変哲もないただのBar
アイツから逃げていたら突然目の前に現れた。
とにかく誰か人がいる場所に、そう思って飛び込んだのがこの店だった。
『いらっしゃいませ、Ailes du Diableへようこそ。わたくし案内人の魔鬼と申します………どうかされましたか??』
マキという人が不思議そうに私を見つめる。
『……いえ……何も……』
『左様で御座いますか…では中にどうぞ』
何も答えない私にそれ以上何も聞かず暖かく迎え入れてくれた。店内は品の良い照明が程良く暗くなっていて木の温もりが感じられる、昔ながらの造りの雰囲気だ。
店内にはバーテンダーと案内をしてくれたマキさんだけみたいだ。思っていたより中は広くでもとても落ち着くそんな不思議な空間だった。
『どうぞ』
私の目の前にカクテルが置かれる。
まだ何も注文していないのに………。
バーテンダーの女性がにっこり微笑み、グラスを磨き始める。
目の前のカクテルに視線を移し眺める、ブルーの透き通ったカクテルを
恐る恐る一口飲んでみた。
『………美味しい!』
その美味しさに驚いてバーテンダーを見上げるとまた優しく微笑む。
女性の横顔は、女の私でも一目惚れしてしまいそうなぐらいとても整っていて綺麗だ。美味しすぎるカクテルと綺麗な女性に、恐怖で凍りついた心がゆっくり溶かされていくのが分かる。
『いかがですか??』
マキさんが優しい笑みを浮かべながら側に立っていた。
『とても美味しいです。店内の雰囲気もすごく素敵です、でもこんな素敵なお店があるなんて知りませんでした。』
『気に入っていただけて光栄です、ところで……』
マキさんが言葉を区切り私を見つめる。
『ちょっと気になったのですが、こちらにいらした時酷く怯えている様に見えたのですが何かありましたか?』
彼の言葉に私は目を伏せた。
『失礼、余計なお節介でしたかな??』
そう言ってマキさんが申し訳ないとつぶやく。私は彼の優しさに首を振り少し怯えた目で窓の外をチラリと見る。外には誰もいない。ホッとして私はゆっくりと話し出す。
『あの……良ければ聞いて頂けますか?』
マキさんは真剣な眼差しでゆっくり頷く。
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