なぜ近代建築の写真を撮るのか?~「居留地ものがたり」が生まれた背景
近代建築、あるいはモダニズム建築の写真を自己流で撮り続けて30年ほどになる。若い頃はフォトグラファーになりたいと少しは思っていたのだが、結局現在はSNSに投稿して「いいね」をもらって満足しているという小さな人間になってしまっている。
それにしてもこの30年で近代建築を取り巻く状況の変化、特に若い人たちの関心の増加には特筆すべきものがあるように思う。
私が近代建築の写真を撮り始めたのは、幼い頃一人で音楽を習いに行く電車の窓から見えた中津の済生会病院の変わらない姿がいつかはなくなってしまうかもと思ったことがきっかけかもしれない。電車が梅田に近づくにしたがって景色がどんどん都会になっていく。淀川の岸に置かれた木でできた小さな渡し舟が見えるとなぜかほっとしたものである。現在ではあり得ないが、そのうち上映中の映画の看板が見えてきたりしたものだ。
変わり行く町の風景。あたりまえのようにあった建物が急になくなってしまう。
老朽化による解体が次々と行われることは仕方がないことなのかもしれない。でも取り壊される前に一度、建物の中に入ってみたい、というのは素朴な欲求ではないだろうか?
最近では建築物を専門家が案内するツアーが人気である。食事付きであったり、かなり高額な費用を取るものも珍しくない。多くの見学者が同じようにスマホやカメラを構えて同じような写真を撮って満足する。未だに自分もその一人なのである。
少し前までは多数出版されている近代建築案内のガイドブックの写真よりもいい写真を撮りたいと思っていたものである。
そんな近代建築の写真と、古くから残る地番の書き込まれた居留地の地図をリンクさせたらおもしろいのではないかという奇妙な発送の下に生まれたのが「居留地ものがたり」である。
地番入りの居留地の地図は神戸のみならず、長崎、横浜、大阪の川口、東京の築地にも存在することを知り、夢中でクリッカブルマップを作成した。
人間は年をとり、町の風景も変わり行く。
お時間のある方、めんどくさいこの地図を楽しんでいただければ幸いです。
居留地ものがたり (takakoym4112289.wixsite.com)