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短詩集

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#短詩

短詩集55 つながり

1.訃報が届かないぐらいの距離 2.メロンパン買いに行こうの仲 3.今度お茶でもまで何光年 4.ゴキブリ退治の守備範囲内 5.隣に座っても決して手は繋げない 6.「ありがとう」は義務だから 7.謝罪は減刑のため 8.挨拶は仕事 9.文句言って無視してご飯食べて仲直り 10.光速のいいねに感じる愛 あとがき 久々の短詩集。 「ありがとう」って強制的なものだと思っていたけど、本来は「うれしい」という感情が伴うものだよな…と、気付いたゆうべ。 ずっと、焦り、義務

短(連)詩集53

1.昏睡した孤独 2.嘘つきの下着は何色? 3.見え透いた嘘と詭弁のメニュー 4.愛のラベル剥がしたら全部腐ってる 5.僕は賢く冷凍保存 6.群れる生き物の脳みそはいつも孤独 7.猫になりたいと彼は言った 8.仲間が死んでペンギンが泣いた 9.そんなものだと狼が言った 10.愛は見えない触れない食べられない 11.赤ん坊は見えるし触り放題でその気になれば食べるのも簡単だから人は勘違いする 12.飢餓以外の理由で行動するためにお食事 13.変わるのは怖い

短詩(文)集52

1.公園で姉に怒鳴られる妹に幸あれと 2.無邪気を罪とする空気で人は息が出来るのか 3.夜が明けると一番美味しい林檎の樹が切り倒されていた 4.暗視カメラに映った般若の顔に見覚えがある 5.悪い虫を腹に飼うな 虫下しをやるから飲めよ 6.躊躇う時にはもう変わり始めている 7.羽化すればもちろん芋虫には戻れない 8.葉を食むのもよいものだときゅうりをポリポリ 9.あなたの傍らで蛹になり黄金色の眠りが私の全てを変える 10.雨宿りみたいな恋は見上げて虹を待ってる

短詩集㊿秋

0.難しい顔でかわいいスタンプを打つ 1.枯葉色の上着でふみふみカサカサ 2.芝生で昼寝のラストチャンス 3.着る毛布が友達から恋人に 4.ずっと寝ていられるのは前世が熊だから 5.沢山食べるのも前世が熊だから 6.ナッツが好きなのは前世がリスだから 7.とにかく冬眠の準備 8.蜂蜜直舐めして後悔 9.案内板に従って遠回り 10.ゆっくり遅延アナウンス

短詩集49

1.松本清張の見過ぎで女性不信になる予定の連休 2.リヨセルが天然繊維だなんて 3.ポリエステルとレーヨンの子みたいな名前のくせに 4.なけなしのティシューを使い回しながら帰宅 5.月一で不機嫌になるぐらい可愛いと許さないと酷いぞ 6.食べものの恨みは食べものでは晴らされない 7.関西ではムーンウォークであとずさりする 8.九州の甘い醤油を嫌われて別れの決意 9.サーモンはわたしのもの あとがき ちょっと気取って書いてみました。 肌荒れが悲しい季節の変わり目

短詩集48

1.絶縁的脅迫メールまだ繋がってること感じたくて 2.「それは他人の言ったこと」中を全て整備してよ君の声で 3.イライラし通知音量上げ返事を待つ僕はピエロ 4.不和ってトキじゃなくゴキブリ 美しいものから絶滅してく 5.殺せば良いという思考回路が僕を内側へと蝕む途中で 6.共存と共依存 寄りかかり倒れ込んで愛し合った後なら立ち上がれる 7.全て血生臭い本能に辿り着く 食べたい壊したい愛してる 8.気ままに母に据え膳 ゆるり流れる親子の時間 9.白だしは煮込みに

短詩集47

1.匿名性に埋もれたい 僕であることに疲れた夕べ 2.抱けない女に縛られて男は何を望む 3.愛してるを数えない もう一度を重ねて重ねて重ねて 4.小鳥は小鳥なのに 白鳥の羽根など気紛れに背負い 5.満たされながら餓えて 今何も要らない 6.いつかの約束をした後で 今すぐをくれるあなた 7.トポロジー的に意味があると呟きながら指輪転がす 8.生きてても死んでても関係ない ひとりぼっちなら 9.「どうせ」のすぐそば控えるプライド そっと火をつけ蘇れと 10.ビー

短詩集46「花火」

1.海を目指せ ここは通れない 2.浴衣男子の方がしとやか 3.女の子庇う男の子の腕の日焼け 4.夜空の映画館 息を潜めず 5.感動と拍手の条件反射 6.刹那を憎んだ僕が花火に夢見るのは君が大きくなるから(甥へ) 7.戦争するより花火大会で競いたいよね 8.あの人元気かな 記憶の後ろ髪煙る 9.リストのフィナーレみたいなラスト30秒 10.今夜なら花火のような恋に生存権を認めてやってもいい あとがき 花火十句。夏の風物詩だけに難易度高い…。

短詩集45 「夏」

1.いつも売り切れなのに誰も持ってないアレ 2.剥き出しの皮膚に浮ぶそれぞれの毎日 3.ぼんぼん盆踊り輪の中に迷い込む 4.座る場所とお手洗いと水と唐揚げ求めて 5.白い女子の一人勝ち 6.ひたすら花火の話題を続け誘いを待つ 7.後悔は全てキャンプファイヤーで燃やせ 8.マリアナ海溝の暗闇と水圧を思う鳥にさえなれぬ僕は 9.羽根がある君は天使 インコ愛でる今日も 10.世界中の愛しさと優しさを集めたら君の形になる 11.やたら冷えてる熱海駅のトイレ 12

短詩集44 「髪」

1.ほうきで連れ去られる僕の一部 2.その指と鋏で私を綺麗にした一時間半 3.髪を梳いて好きと言って そしたら私逃げ出すから 4.欲しいものは重ならない 年々足りなくなる髪と言葉 5.触れられたいのは髪と爪そして骨 他は忘れて 6.顔から下の毛は要らない 7.疎まれる体毛の悲哀 8.人を食べる人の不気味な黒髪 9.毛先まで愛しいと思える人の声で眠りたい 10.縋るように詩を書く夜半 切り立ての髪確かめながら 11.慰めるぐらいなら美容室へ同行してくれ失恋後

短詩集43「右」

1.虫のようにうねっと出てきた芯のない点滴針 左から右へ 2.右手でカラカラ 業界用語で「ポチ」と呼ぶらしいアレ 3.「右に出る者はいない」その傲りに僕は風穴を開ける 4.メロディー係を下りたがる右手「一番低い音が弾いてみたい」 5.僕の右側神経を這った痛み 人体の仕組みに感心している場合だろうか 6.君は右へ 僕は左へ 川は神の瞬きで分かれ違う名前になりぬ 7.方向を忘れたくて椅子ごとクルクル回る私を止めた君の右手 9.「愛してる」右耳も聞きたがってる 10

短詩集42「左」

1.誰かに教えたい「スキはハートの少し左側をタップするといいよ」 2.あなたが私にスキと囁いたのも確か私の左耳だった 3.左手に刺さったままの点滴針コーヒーみたいにdripされるカフェイン苦手な私の体に 4.左に傾げたあなたの横文字私の名前だけ平仮名で 5.その左手の薬指 噛みちぎってやりたいと思った 見えない指輪ごと 6.左手に愛 右手に刀 人は欲張りね 7.イヤホン分けてせーので聴いたあの新曲 左耳だけが覚えてる あとがき げんきです。

短詩集41

1.平気なフリは生死がかかった時にするもの 2.強がり以外の戦略を試さなくては 3.「痛いのはいいけど」いやよくない、うんよくない 4.心の痛みもこれぐらい心配してくれたらな 5.人は人と争いたがっていない、らしい 6.心も体も全部が痛かったんだ あの時 7.痛みの中に置き去りにした僕のこころ 8.とりあえず痛くてしょうがない そうそれが僕の人生だった 9.「痛かったね」そう言われて零れた涙 10.僕の心はいつから麻痺していたんだろう あとがき とりあえず

短詩集40

1.改札をゆっくり進む君の後 群衆リズムに呑まれるぼく 2.ゆるやかに死にゆく君のサイドボード 1000枚の記憶詰まったiPhone 3.食べすぎて 満たされぬ腹 肥える自我 醜くなれば愛が見えますか 4.喪服着て集う我らが持ち寄った 血の記憶いま鮮やかに 5.探してた こんなところにあったのね 切手剥がした君への手紙 6.浴衣着て 見つめりゃ愛を語ります? 仕草で会話 心は惑い 7.疑えば 信じてと言う君愚か 弁護されなきゃならぬ愛など 8.言葉なく育った愛