コーヒーを片手に新聞を読むおっさんみたいな少年が、20年後に編集者になった話
中学1年生ごろから新聞を読む習慣があった。
朝起きると、布団もたたまず部屋を出て、階段を降り、よろよろとキッチンまで歩く。母はやかんで湯をわかし、その熱で手を温めている。父ははちみつをうすく塗った5枚切りのトーストをかじりながら、中日新聞の朝刊を読んでいる。それがぼくが毎朝起きて一番に遭遇する、家族の風景だった。
ダイニングテーブルの父の対面にすわり「新聞、まだ?」と父に聞く。数分待つと、父は読み終わった新聞を、テーブルの上をすべらせるように「ほい」としずかに渡してくれた