場を、気持ちを、価値をなおす力
リモートワーク、不要不急の外出控えなど在宅が多くなっている今、外出を楽しむ提案要素の強いアクセサリーをつくる自分にできることは何だろう?
先日、コワーキングスペースで針仕事をしてみたら、とても珍しい目をされました。パソコン仕事が通常の中では、私の仕事は遊びのように映ったのかもしれません。
針仕事もパソコンも、仕事になるし、遊びにもなる。様々な状況が変化する中で、物事の当たり前の見方を再確認するタイミングなのかもしれません。
手芸を通して見えてきた「なおす」力のお話。
頭で考えることをストップする。
頭ではなく身体で覚えろ、と言うように、手先にも特別な力があると思っています。指先が素材に触れる感覚や手を動かすことに集中することで、思考が一度リセットされるような感覚があります。
頭で考えるばかりになりがちな毎日に必要なのはそんな感覚かもしれない。そんな気がして、コワーキングスペースで「フリーステッチワークショップ」というものをゲリラ的に初開催してみました。
「free stitch workshop」
布やリボンなどの端切れを利用して、お手本なしに技法にしばられず自由に針を刺していくことで、小さなパーツをつくります。
完成するパーツは、色も大きさも様々。つくり手のちょっとした個性が出たパーツをつないだ作品づくりを目指します。
明らかに異色な空気がコワーキングスペースに漂いましたが、参加者の表情がパソコンに向かっていた時とは明らかに変わっていくのがわかりました。
機械的に動いていく手、うまくいかない手、今うまくいっていないこと、昔うまくできたこと……。手先から心がつながり素直な気持ちがぽろぽろと口からこぼれて、普段はしない話に花が咲きました。入れ替わり立ち替わり参加してもらい、初めは不器用だから無理と言っていた人も「ビーズはいくつもつけていいの?」と工夫を生み出す発言をしてくれて、私自身も発見の多い時間となりました。
▼4つでスタートし、最終的に36個に。
(一部端切れをholo shirtsさんにご提供いただきました)
手芸の「なおす」力
このワークショップを通して1番強く感じたのは、手芸の「なおす」力。
まず、「場を治す」。
手芸をする、という行為だけで場の空気が変わりました。仕事を通してみんな何か価値を生み出しているとは思うのですが、それがすぐに形に現れることや誰もができる手から生み出す喜びが空気を伝染していくのがわかりました。その喜びは仕事の健全な空気のような気がしました。
次に、「気持ちを治す」。
運動が発散になることがあるように、文化活動にも同じく気持ちを上向きにさせてくれる昇華作用があります。針や糸は子供のころに触れた記憶がある人が多く、その頃の純粋な気持ちを辿るように遊ぶ感覚で実践し、リフレッシュしてくれたように思いました。
そして、「価値をとらえ直す」。
今回、素材は捨てる寸前で捨てられず保存していた端切れを使用しました。フリーステッチによってゴミではなく新しい価値をもったパーツは0の価値が100倍以上に生まれ変わったといえます。そんなパーツを集合させて何かをつくることで、関わることがなかった人たちの思いがつながっていく可能性を感じています。
私たちは、家電製品が壊れてもなかなか自力で直すことができません。そう思うと、身の回りに残された「なおす力」にはどのようなものがあるでしょうか。
人が持つ、ものをなおす力、関係をなおす力、そんな自然治癒力のようなものを手芸は秘めているような新たな発見なのでした。
おそらく手芸に限らず、鉛筆で文字を書くことなどアナログ的な手を動かしてみる機会には、なおす力が宿っているのだと思います。
1日の中でほんの15分。オススメです。
(free stitch workshop ご興味ある方、いらっしゃいましたらぜひお声がけください!)
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