【積読を買いに⑤】本屋さん探訪vol.3 ハリ書房
前回のあらすじ
忙しくて本を読めない生活にほとほとうんざりしたので、会社を辞めて本屋めぐりをすることにし、二軒目としてROUTE BOOKSに行った。
神保町本屋めぐり
会社を辞めたので、平日も本屋さんをめぐりほうだいである。
神保町は土日に閉まっている本屋さんが多く、会社に勤めている頃はなかなか行ける日がなかった。だから会社を辞めたら、まず行きたいエリアだった。本屋さんが密集していてこのnoteもはかどりそうだし、本とだけではなく本屋さん自体とも偶然の出会いがありそうだ。
気になる本屋さんをSNSでピックアップして、神保町に向かった。
このnoteでは、最初に向かったハリ書房について書く。
優先的にハリ書房に向かった理由はいくつかある。
・移動書店というコンセプトが興味深い。
・2022年7月に開店した本屋さんということで、本屋さん本にも掲載されていなかったため、自分の目で確かめたい。
・SNSで見る限りハリ書房の神保町店は「バックヤード店」という位置づけであり、移動書店故に開店している日が限られている。この日はSNSを確認する限り開店しているということで、チャンスだった。
・Twitterアカウントを作ったばかりの時、ハリ書房のアカウントをフォローした際のフォローバックが非常に早くなんとなく義理を感じていた。
神保町駅を出てハリ書房に向かう道すがらも、いくつも古本屋が立ち並ぶ。
また、本屋・古本屋以外の建物も古き良き昭和をそのまま保存したかのようだ。
ハリ書房は雑居ビルの3階の1室にある。1階はラーメン屋だ。エレベータから出たところでちょうど店主と遭遇し、招き入れてもらった。
バックヤード店というコンセプトなので、店の壁側に並ぶスチールラックに本箱が並び、中央に置かれたキャンプ用テーブルの上にも本箱が重なるという簡素なつくりの店舗だ。
選書は店主が読んだものまたは読んでみたいもので構成されているらしい。
店主の人柄が見えてくるような選書だ。なんとなく飛び込んできた一見の客に、こんなにも内面を見せてもらっていいのだろうかと戸惑うような。これが独立系書店に行く醍醐味というものだろう。
早速おすすめを聞いて、以下の2冊を購入した。
舘野鴻作『ソロ沼のものがたり』
ぱらぱらとめくると、ページのところどころに絵が描かれている。いわゆる挿絵ではなく、ページ全体が風景で、その中に文字が浮かんでいるようなつくりだ。茶、緑、青などの単色の絵で、ものがたりごとに色が違う。
「虫などの実際の生態に沿って描写されているんですよ」と薦めてもらって購入した。
小中学生のころ、動物が出てくる作品が好きだった。宮沢賢治の『よだかの星』や、ドリトル先生シリーズなどだ。
しかしこういった作品は動物の生態に沿って描くことよりも、動物を人間のように書くことに主眼が置かれていたように思う。
『ソロ沼のものがたり』では、ストーリーは人間社会の苦しみ・孤独を反映しつつも、自然な流れでばったの耳が脚の付け根にあること、脚が欠けても平然と生き続ける様子などが描写され、主人公が人間とは違う生き物なのだということを随所で確認させられる。昆虫の体の脆さに関する描写はたびたび出てくるし、ねずみの死体を糧にする虫たちの描写は圧巻だ。
本のビジュアルも作風もかなり特徴的で、ほかには味わえないような読書体験を提供してくれる本である。
ミヒャエル・エンデ+ヴィーラント・フロイント作『ロドリゴ・ラウバインと従者クニルプス』
3章までしかなかったミヒャエル・エンデの遺稿にヴィーラント・フロイントが加筆をし、完成させた作品だ。
「児童書」というくくりなのだと思うが、他のミヒャエル・エンデの作品と同様最後まで一切”子供だまし”を感じる箇所がなく、大人でも最後まで楽しめる作品だ。
小学生のころ、好きな小説家を聞かれるとミヒャエル・エンデと答えていた。『モモ』『はてしない物語』ももちろん好きだが、一番好きなのは『ジム・ボタンの冒険』だった。しかし、思えば成人してからは一度も読んでいないのだった。
あらすじとしては、恐れを知らない少年クニルプスが恐ろしい盗賊騎士ロドリゴ・ラウバインの従者になるべく冒険に出る話だ。クニルプスのビルドゥングスロマンであると同時に、ラウバインのビルドゥングスロマンでもある。
これ以上書くとネタバレになってしまうので、個人的に好きだった一節の引用で締めたいと思う。
※この文章はセミフィクションです。今後登場する書籍・書店・ブックカフェは実在しますが、それ以外は「わたし」含め実在の人物や団体などとは関係ありません。
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