半農半女優
たかが、人生を自分で選んではいけない。
切にそう思う。
アタシは、平日の日中を田植えや畑の手入れに費やしながら、月に数回女優もしている。
女優といっても映画でもドラマでもない。
裸で喘ぎ声をあげて腰をくねらせてはそこそこのお金をもらう仕事をしている。
実った稲くらい深々と腰を折り曲げて野菜を植えているとき撮影のことを思い出す。悲しくはない。なぜかにやけている自分がいる。
そんなアタシのことを、農家のみなさんはよく知らない。東京の若い者が自分探しに農家をやりに来たと思っている。顔は笑ってるし優しくしてくれるけれど、目の奥はどこか冷たい。
自分で作った野沢菜をパリパリと食べる。生きているなぁと感慨深いなると同時に、生きているのか……と歯ごたえのない半生を実感する。