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田舎の吾郎は、

吾郎は電気系専門誌の編集者をしている。
秋田から上京してマスコミ学部がある大学に、親や担任の反対を押し切って入学したはよいが大手マスコミへの新卒採用は全落ち。

1年間の就職浪人をしてもデジャヴを繰り返し、途方に暮れていたところ、今の会社に拾ってもらった。

10年経っても月収が年齢を超えることはない。でもノルマや数字を求められることもないので悪くはないと思っているようだ。

吾郎は訛りが抜けていない。
私からしたらどの秋田県民より秋田弁がきついし、それが年々増している気すらする。

濁点に特徴のあるアクセントで「だがらモテでぇねぇんだ」と言うが、たぶん理由はそれだけではない。

幼なじみの私だから、こうやって普段ご飯を食べてあげているだけで、会話もつまらない。

お互い35歳。どちらも田舎に帰るように言われていた。そんな夏のはなし。

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