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2festival
泪の粒は濁り雨、ワイルドカード
推しのお笑いコンビがM-1の準々決勝で落ちたから泣いた。
震えながらSNSの更新を待っていたら、名前がなかった。
必死に探したけど全然なかった。
そうこうしているうちに、推しがトレンドに上がってきたから、「あ。落ちたんだ」と認識した。
お笑いの価値を人間が決めるなんておかしい。売れなかった元芸人が採点しているんでしょ。辛くないのかな。ホントはめちゃくちゃうろたえているのかな。
「似ているかも」
アタシは新卒から人事をしている。
ペーペーに人材を獲る仕事させるなんて狂気の沙汰だと思う。
大雨の日、靴を泥まみれにして、髪の毛をベタベタにして説明会にやってきた子に共感してしまうのは、アタシもポンコツの就活生だったからだろう。
粗削りなほうが好きなのは、推しの影響なのか。
寡黙で何を考えているか分からないほうを次の選考に進ませるのは、推しの影響なのか。
そんなアタシに、人事の後輩ができた。
雨の日に傘も持たず最終面接に来た子だ。アタシたちが選んでおきながら、今は粗削りで仕事が雑なのがむかつく。おかしいよね。
推しが配信審査でワイルドカード枠を勝ち取り、準決勝に残った。
「それは違うだろ」と冷めていると、後輩君が「おめでとうございます」と絡んできた。
「……うん。ありがとう」
後輩君はアタシになついている。一番年齢が近いからだろうか。
いや、彼はアタシが好きだった。
半年後、アタシたちは付き合うことになった。
推しはM-1チャンピオンになっていた。
人生は分からないものだ。
それから半年。事態は一変した。