最近読んで面白かった本
夏の予感が漂うこの季節。窓のそばで体操座りして本を読むのがここ最近、わたしの最高のひとときです。さて、本日は窓際でゆったり読みたい「最近読んで面白かった本」を一冊紹介します。
「心寂し川」西條奈加
舞台は江戸時代。止まったまま流れることのないどぶ川「心寂し川」沿いで暮らす人々の喜びと悲しみ、希望と絶望を丁寧に描き出す一冊。一編ごとに、スポットライトが変わってゆき、最後は全ての登場人物が繋がっていく……という構図はよくあるものですが、こちらの話の何が面白いかというと、時代は江戸時代にもかかわらず登場人物たちが現代にも通ずる悩みや喜びの中で懸命に生きているという点。「時代は違えど人間はいつも同じことを繰り返しているんだな」と今の自分に置き換えて読むと、ぐんと距離の近づく物語です。
そして、このどぶ川に集まってくる人々は何かしら事情があったり、どちらかというと不幸な人が多いのですが、みんないい距離感で支え合って生きている……そのささやかな人の暖かさにほっこりしたり、「かわいそう」を呑み込んで力強く生きる登場人物たちに、逆に励まされてしまう、そんな本です。
第164回直木賞受賞作、しっとりと沁み渡る物語をぜひ体感ください。さて、また素晴らしい本と出会えるまで、、、!さらば!