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【舞台】三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち(2022年2月15日)録画

歌舞伎役者って、一言発するだけで何もかもをひっくり返すくらいの力を持った特別な存在・・・。実際に舞台で見たら号泣しちゃってただろうなあ・・・。みたにかぶき つきあかりめざすふるさとううんじたち

シネマ歌舞伎の録画を見たので、複製技術時代の芸術、みたいになっちゃっているけど、それでも十分に舞台の勢いは伝わってきた(と思う)。

三谷かぶきとしては2作目ということで、しかも幕末から明治維新を描いたマンガ・みなもと太郎の「風雲児たち」を土台に、あの大黒屋光太夫を主人公とした話、ということで、第一印象としては、「う~ん、好きじゃないほうの三谷作品かも・・・」という先入観だった。

実際、前半のなんか大衆演劇っぽいというか、コスプレっぽいというか、「ドヒャ~!」みたいなノリについていけず、どうしようかなと引き気味でみていた。
すると!猿之助の強い一言!愛之助の渋い一言!次々と役者が魅せる魅せる・・・。その瞬間に一気に画面に引き戻されて、いつの間にか一緒にロシアを泣き笑いしながら旅する仲間になってしまっていた。さらに後半の白鸚!また猿之助!もう、これでもかと役者が”役者”を見せつけてくる。”役者”があふれてもう贅沢・・・。

以前、十八代目 中村 勘三郎が主演した大人計画の「ニンゲン御破産」を観劇した際、正直なところウツラウツラしながら見ていたのに、第一幕の最後のシーンで「からっぽだ~」(のようなセリフ)を勘三郎が発した瞬間、なにか体の芯にストンを入り込んでしまい涙が止まらなくなってしまったことがあった。大声で叫んだわけでもない、何とも言えない空虚な心の叫び。今思い出しても泣きそうだ。この時、歌舞伎役者のすごさというものをまざまざと見せつけられたような気がした。
歌舞伎にはほとんど接点がなく、子供のころに何度か歌舞伎座に行ったくらい。コクーン歌舞伎もたまに見に行く程度。
今回はシネマ歌舞伎ではあるけれど、歌舞伎は役者目当てでいくお芝居、とよく言われるのはその通りなんだな~、と改めて思わされた。複製技術時代の芸術でも、伝わるよ、ベンヤミン!

最初に乗組員全員の名前を呼んで指示を出す光太夫のシーンが、最後にまさに悲しさとなって繰り返される。壮大な苦難の道のりが、カノンのように提示される軽やかさによってかえってその裏の哀しさが見えてくる。客席まで波を模した布で覆う演出などは舞台ならではだけど、1日でもはやくこういった演出が戻ることを祈る。
ラスト、出演者みんなで歌うシーンはもう号泣。歌もいい。舞台って、こういうことがあるから面白いんだよな~。


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