やるかやられるかの世界を生きる~統合失調症である私のサバイバル術その㉓~ちいさな自信
前回まで
精神保健福祉士の通信課程に身を置いていましたが、なかなか順風満帆とはいきませんでした。
実習に行く中で、自分の精神障がいの当事者経験も支援に活かせるかも、と思っていた思いも、もっと言えば支援の仕事に就くということすらももしかしたら無理なんじゃないかとさえ思ってしまいました。
やるかやられるかの世界を生きる~統合失調症である私のサバイバル術その㉒~あるひとこと|せっと|note
今の私があるわけですから、そこはなんとか乗り越えたわけですが、今回はその後の経過についてお話ししていきます。
サクラサク
この間途中入院することもありましたがレポートはなんとかすべて提出することができ、通信課程を修了することができました。模試の結果にひどく落ち込んだりもしながら必死で国家試験を迎えます。試験を終えても怖くてとてもとても自己採点はできませんでした。
それでも合格していました。とても清々しい春の日の発表であったことを覚えています。
「道が開ける」、そんな思いを抱きました。スタートラインに立てた、ここから反撃開始だ、といった思いで、早速精神保健福祉士として就職活動を開始します。ところがここでの就職活動が難航します。これは自分にとっては予想外の出来事でした。
仕事がない・・・
当初の志の通り、統合失調症の当事者でもあることも精神保健福祉士の仕事をするにあたって武器になると考え、病気のことをオープンにして応募していたのですがことごとく断られます。履歴書すら受け付けてもらえないような状況がしばらく続きました。
もちろんそれだけが原因ではなかったとは思いますが、当時は精神保健福祉士とはいえ当事者であるものが支援の仕事に就くということに対してのハードルが今より格段に高かったように思います。
そこでまずは職に就くということを第一優先に考え、ハローワークの職員さんの助言も受けて病気のことをクローズにして仕事探しをすることにしました。
結果的に知り合いのつてをたどり精神障がいの方を支援しているとある社会福祉法人に非常勤として採用されました。週2回、半日のグループホームの世話人業務でした。
2009年、精神保健福祉士としてのキャリアのスタートを切った年になります。
精神保健福祉士として
グループホームは制度上、365日開所していなければなりません。私の仕事は常勤の世話人の公休日にグループホームで見守りを行うといったものでした。
見守りといっても特に私に対してかかわりを求めてるような入居者さんはほとんどおらず、共有スペースの掃除や翌日の朝食づくりなどがメインの業務でした。
そんな感じで勤務していたある日、入居者の一人の方が「話がある」、と私のもとにやってきました。
その方は言います。
「せっとさんは知的障害の分野の経験はあるらしいが、精神障がいのことは知らないだろう」、と。
さらに続けてその方は、精神障がいの人たちはさまざまな偏見や差別にさらされている、そのような状況はここのグループホームでもあって、世話人は精神障がいの入居者の方の言葉に耳を傾けてくれない、そのような現状について(わたしは)どう考えているのか?といった内容のことを話されました。
一瞬実習先でのメンバーさんに言われた一言が頭をよぎりました。自分がここでも入居者の方々に距離を感じさせるような態度をとってしまっていたのかも・・・なんてことを思ってしまいました。
しかしこの時、私の中である思いが浮かびました。
「精神保健福祉士としての力を使うべき時が来た」、というものです。
彼に対して私は、「世話人は掃除や食事作りのためだけにいるのではなく、入居者の話を聴いたり、相談に乗ったりするためにいる、今日のように話がある時は、(わたしは)土日に出勤しているから話を聴くことはできるので遠慮なく話しかけてほしい」、といった内容のことをお伝えしました。
そしてそのあと自分が精神保健福祉士であることを彼に告げました。
すると一瞬にして硬かった彼の表情が和らぎました。途端に笑顔になり、私に対して抱いていたであろう警戒心がほどけ、心を許してくださったようにも感じました。
ちいさな自信の芽生え
精神保健福祉士という資格が持つ信頼度の大きさをはじめて感じた出来事でした。と同時に自分もそのように信頼がある精神保健福祉士の仲間入りをできたような感じがしてとても誇らしくなり、「自分もけっこうやれるかも」、みたいにちいさな自信が自分の中に芽生えた瞬間でした。
それから彼は出勤日に私のもとに来てくださるようになり、話を聴いたり、時には相談にものったりするようになりました。
と同時に他の入居者の方とも徐々に私のもとへ来てくださるようになっていきました。
今回はここまで。支援の仕事を続けてきて今まで多くの方とかかわってきましたが、初めて自分にも何かできることがあったんだ、と感じたときのエピソードをお話ししました。
ここから私はどのような歩みを進めていくのでしょうか?また次回以降に。