富士吉田は今、移住者や関係人口も含め、若い世代を中心に変わりつつあります。外から来ている人たちは、新しい感性をもって富士吉田の魅力を見つけてくれますし、地元だけでは気づけないまちづくりのアイデアも出してくれます。これからの地方行政にとって、若者たちの感性を生かした町づくりはすごく大切です。新しい意見を柔軟に受け入れ、本当に魅力だと思えることは取り入れていく。私たち行政はそのための環境を整えていく必要があると感じます。
私は地元の人間ですが、地元の人には当たり前の景色であるため気づかない、移住したからこそ気づくこの町のよさを教えてもらいながら、イベントを開催し、そして、町のみなさんと一緒に動いています。やはり町の人に喜んでもらうことがいちばん嬉しいんです。
昨年実施したFUJI TEXTILE WEEKは、外の人の力も借りながら富士吉田が培ってきた織物産業の魅力に光をあて、そして富士山がはちゃめちゃ大きく感じ、昭和レトロな町並みを感じ、マチの人の温かさを感じられるイベントです。富士吉田は古くから織物産業で栄えた町で、日本でも有数の歴史と世界にも評価される実績を持っています。織物産業は大きく縮小していますが、他方で、新しい世代の活躍も目立っています。これまで織物産業の仕事はOEM(受注生産)が中心でしたが、新しい生地や製品の開発などを積極的にするクリエイター肌の職人も出ています。
FUJI TEXTILE WEEKは、展示会としての生地の展示ではなく、あえて富士吉田の趣ある古い建物を舞台に、織物をテーマにしたアート作品を展示することで、織物の価値に新しい光をあてます。アートフェスティバルの形をとることで、これまでの卸業者だけではなく、クリエイターやデザイナー、あるいは商業施設や宿泊施設の人にも来てもらえます。一流アートディレクター、キュレーター、アーティストの方に関わってもらい、普段だと絶対訪れないような人たちが連日、富士吉田の町とともに織物を体験してくれました。
重要なのは織物だけではなく、富士吉田そのものの魅力をいかに見せていけるかです。アート作品とともに古い建物をうまく活用し、文化観光の文脈で織物の魅力を体験してもらう。そして夜は西裏地区で美味しい食事とお酒を楽しみ、様々な交流を生んでいく。町全体として魅力を高めることによって間口を広げ、新しい層に富士吉田の織物を届けることができるのです。