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髙崎則章(鯖江市役所) - 行政は黒子に徹し、「めがねのまちさばえ」をプロデュース/発信していく

editor's note
鯖江市役所の髙崎則章さんは、市役所職員としても個人としても、新山さんの学生時代、市役所勤務時代、独立して会社を経営している現在と一貫して惜しみないサポートをしてきました。行政の立場での関わり人口、若い移住者への視点をインタビューしました。
自他ともに認める新山さんの鯖江における「父」のようなお二人が髙崎さんと谷口さんです。地縁のない土地に入っていったときに、失敗も挑戦も抱き止めながら、地域内での関係性の構築やコミュニケーションを取り持ってくれる人がいることはどんなに心強いことでしょう。
本当に「関わり人口」を作っていくには、徹底して一人に向き合う姿勢が必要で、その姿勢が「地域の活動熱量」としても伝播していきます。その結果として、地域内外の多く人々に影響を与える活動が生まれてくるのだと、新山さんと髙崎さん、谷口さんの関係から見えてきました。

新山直広くんが移住した当初は、田舎の風習や付き合いに大変苦労し、つらい思いもしたと思います。市役所を退職する際も都会でチャレンジしたいという気持ちもあったようですが、何度も話し合いをさせてもらううちに鯖江で頑張る決意をしてくれました。あのときに都会へ行っていたら今の新山くんもなかったでしょうし、鯖江市も若者が可能性を求めて集まってくることもなかったと思います。アートキャンプしていた当時は、夜中のミーティングに付き合ったり、差し入れをしたりして、こちらも本気で付き合いました。そして人間関係を作り、学生から卒業後、鯖江に移住したいという相談を何件も受けました。そのときは、必ず本気度を極めます。単に鯖江が好きだから移住したいという子は続かないように思います。眼鏡がしたいとか、漆器がしたいという、鯖江でしかできない理由のある子は移住してきますが、そのときには就職先を一緒に探したり、呼んだ以上は、その子も人生をかけてくるわけですから、行政でできる支援だけでなく、個人的にも精一杯応援させていただいてきました。

前市長が「どこの都市でもやっているような金太郎飴のまちづくりではだめ、他市に真似のできないまちづくり」を掲げ、「失敗してもよいから若者の提案は具現化してあげなさい。全部俺が責任とるから」と、若者に居場所と出番を作り、決して成果は求めないというスタンスで今のような環境をつくっていきました。若い人にはとりあえず何かに参加してもらって、自分の居場所を見つけてもらうことが大事です。居場所があれば県外に行っても戻ってきますし、そこに外からやってきてくれる子たちもいます。やってみてだめならだめでよいし、変えられるものは変えていく。そんな柔軟性と寛容性がとても大事です。現市長も「みんな輝く市民活躍のまちづくり」を掲げて、誰もがチャレンジできるまちづくりに取り組んでいます。「市民力」を引き出すためには、市民がまちづくりのステージで主役を演じられるように、行政は、黒子に徹するべきだと思います。そして、全体をプロデュースして、「めがねのまちさばえ」を発信していくことが必要だと思います。

鯖江市には、日本で唯一の産地を有する「眼鏡」をはじめ、伝統と最新技術を有する「繊維」、「漆器」といったものづくり産地があり、そして、1995年にアジアで初めて開催された「世界体操選手権大会」をきっかけに始まったボランティアによる「市民活動」の文化が根付いています。文化が根付くことにより、「市民主役条例」が制定されるなど、他市に真似のできないまちづくりができています。これからは、派手なことをパフォーマンス的にやることも時には必要ですが、先人が築いてこられた「宝」に新たな「文化」を融合させ、鯖江の文化を丁寧につくり上げていくことが大切だと思います。小さなところから文化をつくり上げて、広げていきながら満足度を高め、質を高める仕掛けをしていくことが、市の魅力に磨きをかけ、住み続けたい・住んでみたいと思ってもらえる、選ばれる鯖江市につながると思います。

髙崎則章(鯖江市役所 総務部市民活躍課 課長)

第五章 地域の活動熱量・関わり人口 - 考察
地域の活動熱量 
地域内に地域の魅力を向上させる主体的な活動を起こすリーダーやコミュニティがあること

関わり人口 能動的に地域を行き来する訪問者と、地域住民の双方向に良好な関係があること

第五章 地域の活動熱量・関わり人口 - インタビュー
地域の資源を見つけ、磨いて、価値化することで、創造的な産地をつくる
新山直広(TSUGI代表 / RENEWディレクター)

行政は黒子に徹し、「めがねのまちさばえ」をプロデュース/発信していく
髙崎則章(鯖江市役所)

産地の未来が「持続可能な地域産業」となる世界を思い描いて
谷口康彦(RENEW実行委員長 / 谷口眼鏡代表取締役)

ものをつくるだけではなく広める/売るまで担う新時代の職人
戸谷祐次(タケフナイフビレッジ / 伝統工芸士)

顧客との接点を増やすことが、産地にもたらす価値
内田徹(漆琳堂代表取締役社長 / 伝統工芸士)

暮らしの良さを体感する中長期滞在
近江雅子(HÏSOM / WATOWAオーナー)

私たちがいなくなっても、地域文化を守ってくれる人がここにいてほしい
臼井泉 / 臼井ふみ(島根県大田市温泉津町日祖在住)

地域の方々が輝けるようにサポートをする行政の役割
松村和典(大田市役所)

使い手を想像し対話から生まれる作品と、新しい関係性
荒尾浩之(温泉津焼 椿窯)

里山再生と後継者育成を結ぶ
小林新也(シーラカンス食堂 / MUJUN / 里山インストール代表社員)

「デザイン」を通じた外部の目線/声によって、地元に自信を持てる環境をつくる
北村志帆(佐賀県職員)

継続的な組織運営と関係性の蓄積が、経済循環を生み出す
山出淳也(BEPPU PROJECT代表理事 / アーティスト)

価値観で共鳴したコミュニティが熱量を高めていく
坂口修一郎(BAGN Inc.代表 / リバーバンク代表理事)

文化庁ホームページ「文化観光 文化資源の高付加価値化」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/bunkakanko/93694501.html

レポート「令和3年度 文化観光高付加価値化リサーチ 文化・観光・まちづくりの関係性について」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/bunkakanko/pdf/93705701_01.pdf(PDFへの直通リンク)
これからの文化観光施策が目指す「高付加価値化」のあり方について、大切にしたい5つの視点を導きだしての考察、その視点の元となった37名の方々のインタビューが掲載されたレポートです。

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