シールの貼り方は人生のセンス
映画『亀は意外と速く泳ぐ』の名言。
シールやステッカーをいかにセンス良く貼れるか……かなり重要な問題だ。
私のキャリーケースにはマロンクリームちゃんが2人いて、MILKFED.のステッカーもあって、KAWAIIではあるのだが、キマッてはいない。余白がかなりあり、寂しい。
一方、妹のスーツケースはどうだ。
海外のディズニーランドのステッカーが無造作にかつ、所狭しと並んでいる。
ミッキーマウスを愛してやまない彼女らしさ。無造作にベタベタと貼れる大胆さ。
センスもあるし、個性もある。
「フロリダに8日間行ってくるわ!」
「え、8日間? ディズニー以外に、どっか観光するん?」
「何言っとるん! ずーっとディズニーにおるよ〜」
そんな妹だ。ちなみに彼女は、名残惜しくて泣きながら帰路についた。一週間近く滞在して、名残惜しくて泣く。ちょっぴりの狂気。
最近の私はノートパソコンを買った。
ノートパソコンと言えばステッカー!
ステッカーを貼りたい欲望がムクムクと湧き上がる。
上手には白鯨と紅鶴のステッカーを貼った。たくさんの思い出がある場所。なくなってしまう場所。思い出を背負って文字を綴りたくて、貼った。
下手には『ヨーロッパ企画の暗い旅』のキャラクターである旅くんと、番組タイトルステッカーを貼った。
ヨーロッパ企画はもはや魂の一部であるし、「すべてを生きるつもり。」のワードに共鳴している私は、暗い度に出る必要がある。
そもそも旅くんのステッカーを保存しておくのは、旅くんに失礼だ。ノートパソコンなのでチロル等、喫茶店で文字を編むこともあるかもしれない。旅くんにはいろんな景色を見せたい。一緒に旅をしたい。
旅くんのぬいぐるみとかが出たら良いのになあ。めちゃくちゃ「ぬい撮り」するよ!
Macのパソコンではないので、喫茶店で作業をしていたら陰湿なイジメに遭うかもしれない。
パソコンのロゴを潰すべく、センターにもステッカーを貼った。創作をすることに命を費やしている友人のステッカー。友人は私のことを面白がってくれる。私の文章を好きだと言ってくれる。サンリオピューロランドのKAWAII歌舞伎を観せたら、泣いてしまう感性の持ち主。そんな友人の産み出したステッカーは、センターに相応しい。
私のパソコンは現在、味園ビルエリアとヨーロッパ企画エリアと友人エリアで分断されている。余白はまだたくさんある。
ここの余白を「センス良く」埋めていくのが難しい。
だって、「シールの貼り方は人生のセンス」なのだから。
慎重派な私は、余白部分にお気に入りのステッカーを置いてみる。
『四畳半タイムマシンブルース』のステッカー。その作品のモデルとなった銭湯のステッカー。
大好きな曲『W杯』のステッカー。
『四畳半タイムマシンブルース』のモデルとなった銭湯にはサウナがない。『W杯』の歌詞はサウナがキーワード。サウナのTVでワールドカップを見る男たちの曲。
サウナのない銭湯のステッカーと『W杯』のステッカーを並べて良いものか。矛盾に頭を抱えている。
下鴨神社は物販お守りなどが豊富な「ブルーオーシャン(吉住の単独を引用)(私は吉住のあのネタが大好き!)」である。下鴨神社からもステッカーが出ていた。
森見登美彦が好きで、『四畳半神話大系』を特段愛している私は、「下鴨神社のブルーオーシャンからはいくつ買っても良い」としている。
普通の寺社仏閣では「そんなにお守りを買ってどうするの?」となるが、下鴨神社は別だ。お布施をジャブジャブしてナンボである。
お世話になりまくっている神社であるし、私が世界で一番大切にしている神社なのだ。
三重県出身の私が「お伊勢さんより大切!」と書いてしまうのはどうかと思うが、四畳半主義者としてはやはり、下鴨神社を大切に思ってしまう。これは仕方のないことだ。
下鴨神社のステッカーを、ヨーロッパ企画の旅くんステッカーや、『四畳半タイムマシンブルース』の隣に仮置きしてみる。うん、私って感じだ。私の魂を具現化している。
仮置きしたステッカーたち。
どれも思い入れのあるステッカーばかり。
しかしそれを貼ることが怖く、私は仮置きしたまま眺めている。
ノートパソコンを開くときは、ステッカーを退ける。作業が終わればまた仮置きだ。
貼ることが怖い。
だってスズメが言ってたもん!
「シールの貼り方は人生のセンス」だって!
センスの悪い人生を送りたくない!!
そしてやっと私は気が付く。
こうやってウジウジと、ずっと石橋を叩いているだけの私。
これが「私」だ。勇気がない、一歩を踏み出せない、ウジウジとした、慎重派な、ビビリな私。
センス良くシールを貼れる人間。
ダサくしかシールを貼れない人間。
そもそもシールを貼ることが出来ない人間。
……ああ、やっぱり、スズメの言っていることは正しかったんだ。
ダサくても良いから、せめて「シールを貼る土俵」にまでは辿り着きたいものである。