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笑う犬

色違いの
Tシャツを着た君は
なぜか
僕よりも生活感がない
不思議にも

その
違和感は
何故だか
妙に柔らかく

その
生温さは
10歳の体温と
同じ温度で

幾ら
ダラダラと
だらしなくても
芸術のセンスと
服の着こなしは
礼儀正しかった

窓際の感情から
覗きこんだだけの
傍観者の感覚にも
謙虚さは
まだなかった

等身大にはなれなかった
自分側の嫉妬に睨まれた

さらには
現実感と存在感にも
苛まれた夜の風は
しっとりとした甘味を
鼓膜の奥に置いていく

ただただ
その場に
僕の甘えを置いてきた

生命力のような輝きのない光に
ある種の苛立ちを一瞬憶えたら

昨日まで
どうでもよかった筈の
ホントの事は

ほんのりと
口許には
笑みを浮かべて

隣りの犬
白黒のビーグル犬にも
ちゃんと挨拶をした

そのビーグル犬は
日本語が堪能で
毎朝、哲学的なコトバを

僕じゃない方の
おもちゃのピアノを
弾いてた男の子にも
軽やかに呟いた

彼もまた、笑う犬の1人だった

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