《ソライロ》
『殺してしまいたいほどの青い空』
昔は空の絵を描くのが得意だった。
だいぶ終盤にさしかかって、パレットの絵の具から
セルリアンブルーを取り出すと、
ほんの少しだけホワイトを混ぜる。
なるべく淡い色から順にキャンバスの中心に向かって
絵筆で塗り進めていく。
一番明るい色と暗い色。
そのちょうど中間色が真っ先に視界を埋めていく。
光の加減で印象が変わる。空の色はあまりにも深い。
まさにグラデーションの極地。
ものすごく薄く伸びたかと思えば、
次の瞬間には真っ青な濃さに圧倒されてしまう。
こんなのズルいよ。
とても絵に描けない。毎回のように思う。
空がその美しさで、僕を裏切ったことは
まだ一度もない。
いつだって、自分のイメージや想像を遥かに越えてきた。
僕にはどうしてもそれが表現できなかった。
その表情は千差万別。
ものすごいバリエーションだ!
どうして空を描きたくなるのか。
それはたぶん、僕を、この世界を、
ソライロが取り囲んでいるからではないだろうか。
その果てには宇宙があって、様々な惑星が連なっている。
僕が絵を描き終える頃にはまるで顔色が変わってしまう。
すっかり辺りは暗くなった。
もう同じ色は使わないと思う。
ただ一つ願うのは
明日は雨が降りませんように。
傘をさしながらのスケッチほど難しいものはないからね。
『殺してしまいたいほどの青い空』
僕がいつか死んでしまったら、
また誰かがこの場所で空を描くのかもしれない。
僕は離れた場所からそっと見てる。
そうだね。
たぶん、雲の上からじっとながめてる……。
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