住民票

わたしは
ほんとは
そんなこと
どうだっていいの
これは
あなたのためにいってるのよ
どうして
それがわからないの?

うん、ぼくにはわからない
あなたのいってることが
よくわからない

じゃあ
もういいわ
かってにすれば?

そうだね
かってにする
ぼくはじぶんのためにいきていく
すきなようにいきていく

あれ以来
君とは話すこともなくなった
約二年間
今頃、ボクを心配してるのかな?
って言ってはみたけれど
実際のところ
ボクは君のことが心配だった

思い遣りのつもりで言った
優しさのつもりで君が口にした科白

もう一度
さっきの場面を
ボクの頭の中で構成し直してみる

本棚がそばにある
教室のような場所
ボクの手前には学習机が二台置いてある
君はボクの向かいに座ってる

ボクと君はトモダチだった
だったよね?たしか
前の日にみたテレビのはなしをしたり
楽しかったこと
嬉しかったこと
悲しかったこと
寂しかったこと
痛かったこと
自分の心をカラッポにするかのように
全部話したっけ?

今となっては
それがホントは
良くなかったんだと思ったりもするけれど

後悔したって
過去にはもどれないから
ボクは
今を生きていく
それぐらいしかおもいつかない

別に
ボクが正義で、君が悪
そんな風には思わないけど
ときには
正義は人によって
カタチが変わってしまうし
君がイメージした悪魔と
ボクの心に棲む悪魔の顔は違う

そのギャップと違和感が
埋まることなどありえない
たぶん、永遠に

『じゃあ、どうしたらいいのよ?』
『具体的に』

君はきっとそう言うだろう
マジメな性格のひとだから

だけど、それは
とても難しい問題で
今、こうしてる間にも
世界中で研究されている
名前も知らないような
哲学者
倫理学者、言語学者たちに

それは
とっても素敵で
実は
尊いことなんだ

ボクらの日常にピタリと当て嵌るような
正解を探す人々がこの世界を造っている

間違いもする
実験もする
失敗もすれば
挫折だってする
そして、
もちろん、成功する

そのくりかえしが人生という説もある

君にも
ボクにも
罪はない

自分は悪くないから
気にしなくてもいいんだよ
心配することも
不安に思うことも

過去
未来
希望
暗闇
誕生論
死生観

その他の意味がわからなくても
君は幸せになれる
それは明後日のことだ
すぐそばまできている
どうかそれを忘れないで

ボクの記憶には
君という名前のボクが住んでいる

ほら
住民票にもちゃんと記載してある

次の引越しはまだまだ先のはなしだね

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