NEW ADVENTURE
冒険者たちはいつも
基本的に
自分のことが
あまり
好きではなかったから
週末には
自分探しの旅に出た
必ずと言っていい程
それが不公平
多少の不都合であっても
新しい出会いはあったから
後悔はしなかったし
それを肯定感に替えてもいけた
自然として
当たり前として
奇跡的なことを
真新しさを望むこと
自分の精神に
素朴な疑問を持つこと
過度な未来への期待はせずに
旅に出る前日は
早く眠った
たいした準備も整えずに
それでも
何とかなること
確信
自信があったから
不安は
不安にならなかった
旅の途中
暗い話もたくさん聴いた
人々の性質
貧困な暮らしを知った
この世界
大西洋の果ては
意外と
案外、狭かった
自分の心は
かつての見識は
理想の世界観と
同じ大きさ
奥行きに広がった
次の目的地は
すでにもう
決まっていたから
深く案ずる
悩むよりも先に
具体的なツアープランと
スケジュールを考えた
それが
彼の人生
一番の楽しみでもあった
個人的な感情は
その場所
旅先に置いてきた
というのを口実に
自身の問題点は
日々の生活には
さ程、影響しなかった
自分は
特別だったわけじゃない
決して優しくはなかったのに
住民にはいつも歓迎された
冒険する
ホントの理由は
自分を
ニンゲンらしさを
理解したいという
哲学的な欲求
それだけだった
ありふれた感情のなかに
冒険の醍醐味はあった
全く新しい
自分自身との出会い
未来への道のりが
彼の信念を支えた
嫌われるのは
怖くないから
自分を信じて
翌朝には
また、次の地点へと向かった
孤独感は一度も
切なく感じたりはしなかった
家族と離れる
コチラ側の寂しさは
あなたも
わたしも
傷つけたりはしなかった
だから、今夜も
眠る前には
『ぼうけんのしょ』に
素直な気持ちを記述した
セーブされたデータ
USBメモリのなかに
保存された旅の記憶は
それを読んだ
この心にも
確かに響いた
冒険者たちは
自分を忘れなかった
そのことが
彼らの足跡が
やがて
世界中に蔓延した
そして、
ついに
平和がやってきた
この世界にも
この手渡しにも
確かな意味が
あったという
一個めの物語
たった一つ
経ったのは一瞬
その場に
闇雲に
立ち上がったのは
この暗黒
不安定を
今すぐ絶ちたい
手放したいと願った
いつも
いつまでも
それだけ
そのことを
心の底で
祈り続けていた