ビー玉

君を
ボクが
ほったらかしたのには
ちゃんと理由があった

誰もが納得する
このはなしを聴けば
あとは
ボクが話しだすだけ

それは
きっと
ボクだけでなく
この世界も
救ってしまうだろう

歪みを歪みとして捉え
美しさを美しいと感じ
醜さの意味を調べた時
君とボクは互いを理解し合う
つまり、ホントの友達になる

そんなこと
誰も望んでなかったような
ボクたち二人の姿を観て
街中はカーニバルとなった

夜店で綿菓子を買う君に
ボクはベビーカステラを薦める
たまごがいっぱいはいってると
気がつけば
君の口のなか、唇はベタベタで
ボクが差し出した
ウェット・ティッシュの
存在価値をアピールしている

当て物
くじ引きが好きなボクは
あの一番大きなプラモデルを狙って
ライフル(空気銃)の狙いを定めた
すぐ隣りの君のために
たったそれだけの理由で
ボクの集中力は異常なくらいに増して
見事、的を射抜いてしまう
一等賞、景品のプラモデルは
君にもうあげてしまった

ボクは、自分の感情を
今まで
ほったらかしにしていたの
それには
ちゃんとした理由があって

自分の感情を優先したら
目の前の君が
傷つくと思ったんだ

たぶん、
ホントのことを言えば
ボクの気持ちはラクになる
それは
最初からわかっていた

遥か遠い昔
ニンゲンが2本の足で
歩き出すことを
選択した時代から
すべては
ボクが生まれる前に決まったことだ

その染色体に刻まれた
ボク側の情報は
君のとは
色も形も違っていて
一般的に
ボクらは他人だった

ボクの頑固さを
君の柔らかさが
ちょうどいい感じに
白く濁ったコップの水を
磨くことも
混ぜることもしないで
水を透明に変えていく

その水は
誰かにとっては聖なる水
そして、
また別の誰かには薬になった

ボクには
なんと言えばいいだろう?
言葉にするのはとても難しいけど
ウ〜ン、双眼鏡かもしれないな

このバランス感覚を使えば
ボクには
周りの世界がとてもよく見える

人差し指の先で
触れられそうなくらい
ボクの右手が
届いてしまいそうなくらいに
まるで
拡大するように近くに見える

澄みきった
純粋な気持ちというのは
こんなにも気持ちが良くて
世界を美しくするものだったんだね

今、ボクが感じるものは
生きる喜びと
嬉しさぐらいのものだ

誰に
この気持ちを伝えたいか?
それは
もちろん、そばにいる君に
ボクは伝えたい

子供の頃に遊んだ
ビー玉が
今はもう割れてしまって
なにも映らないくらいに
凸凹になってしまったけれど

そのビー玉は
駄菓子屋で
ラムネを飲んだ時に
お店の人に頼んで、取りだしてもらった
ビー玉なんだ

ボクにとっては
今も大切な宝物
テーブルの上で
光っているビー玉を
さっき
君にもらった双眼鏡で
ボクは覗いてみた

ターン・スライドの先には
ビー玉ではなくて
笑う君の顔が
どアップになって映ってる

そして、君は
小さなオチョボ口を動かして
ボクに言った

『ダイジョウブ』

『トモダチじゃなくて』

『ワ・タ・シは』

『アナタを』

『ア・イ・シ・テ・ル』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?