チョーク・アート
決して
がんばって
といわないボクを
イジらしい瞳でみつめる君の横顔を
マウシロの席
スクール・チェアの隅っこからボクは
誰もいなくなった教室
黒板には白いチョークで書いた文字
文字はうつくしいとは言えないけれど
なにかの意味を
鮮明な表現で1枚画のように映しだす
ボクが席を立って、帰ろうとしたら
君がうしろの扉を開いて、入ってきた
なにも声はかけずに飛びだしたボクを
君は激しくなった
鼓動を抑えるのもわすれて
黒板に書かれた文章を読む
その文章、こんなの、初めてと
君は当惑してしまった、不覚にも
何故なら、その文章は君を主人公にした
ひとつの物語となっていて
黒い世界にひかれたたった一本の白線
チョークの色が白かったから成立した
誰も知らないような、知ることのない
世界にひとつの世界観だったから
その話の主人公が君自身であったこと
君の横顔をみて、走り去ったボクの気持ち
そのギャップはやがて焦燥感となって
新しい不安と希望を齎すような表情のまま
明後日の朝はやってくる
ちょっとモヤモヤしたけれど
明日は日曜日、学校はお休み