サビヨン
脚色は
特別
したくないし
すべてが事実である
必要性も
そこにはない
紅く腫れた傷には
Band Aidの絆創膏
昔、子供の頃から
変わらず
それがボクの真実
君の真実は
訓読み?
なら、マミちゃんか
だけど、
どうやら
本名ではなさそうね!
君は
ホントのこと
言わなくたって
顔に全部、書いてある
書道の腕前は六段
カツテ、小学生だった
ソフトボール部に所属
ホントは野球がしたくて
男の子に憧れていた
友達はほとんどが男子
中学までは彼氏はできず
初めてのデートは高校一年の夏
16歳の誕生日の前日だった
その彼氏とは
1年弱付き合ったあと
高2の夏休みに別れた
それから、しばらくの間
君は
同級生の友達が話しかけても
Mugonを貫いた
三ヶ月間
学校は楽しい場所
ではなくなった
居場所はなくなり
君は街へ出た
繁華街のネオンサイン
眩しい大人の街、新宿
別に
誰に憧れたわけでもなく
君は次世代アイドルとして
スカウトたちの目に止まった
それ以来、君の周りは
とても賑やかで騒がしくなった
そして、或る日、唐突に
別の、第二の人生がスタートした
だいたい、そんな感じ?
僕は占い師じゃないけど
実際は
ただの
職業ライターの卵にだって
このくらいは書けてしまうし
別にたいしたりはしない
よくある平凡パンチ
ごくごく普通のことだ
というのは嘘で
僕は詩を書く
詩人になりたいだけのニンゲン
過去の君よりも
全然、人気がない
Instagramの
フォロワーだって二桁の
インフルエンザみたいな厄介者
どう思う?君は
ここまでのハナシ
ちょっと前振りが
長くなったけど
まあ、現実とはいつだって
そんなもんだ
甘くも、辛くもない
中華料理じゃないし
淡々とした日常には
XO醤(ジャン)のような刺激も
オイスターソースのような深みも
残念ながらない
まるで、そこには
始めから
なにもなかったかのように
毎日は平坦な1本道だ
要は
それを
つまらないと
感じるかどうか
君の気持ち
SENSEの問題
大切にする気持ちが
もしも、君側にあるなら
この番号に
電話してください
僕は期待しない
誰が相手だろうと
社会も、世の中も、国も
同じカテゴライズに在る
君にも
期待はしていない
電話をかけるのは
君だ
僕じゃない
そういうこと
わかるよね?
じゃあ、お疲れさま
話せてよかった
きょうは
時間をありがとう
Band Aidの別名は
サビヨン
錆びた4本の傘
それを治すために
翌日の夕方に
僕の電話が
小刻みに振動した
ガラパゴスの
小さなモノクロ画面に
表示された名前は
星野真実(ホシノマミ)
マミちゃん
君からの着信だった