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風味絶佳

蒼くなった
醒めた顔を
初めて
見つけたように

合格率が
パチンと弾けて
辺り一面
土砂降りの雨んなか

アテもなく
一緒に
一瞬の間を
走りまわった

ヨルの響きは
すぐ側を駆け抜けた
全速力じゃなくて
体はスローなのに

経った感覚と
二人の感情は
目の前を通過していく

初恋のひとに
再会したかのような
頬っぺの紅さは

昨夜、眠る前に
食べた風味よりも
リアルな
甘酸っぱさだったから

紅色に熟した
果実を
一本の枝から
もぎ取ったって
勿体ないとならなかった

後ろめたさに
代わり
違いがないなら

緑色の葉っぱが
飛び散っても
飽きの色が
ちっとも変わらないなら

自分側の切なさは
まるでなくなっちゃうから

生まれて初めての
軟らかいまま
半生の感情であることを

現実感のまんま
頬っぺを撫でたら
良いだけの

美味しいと言えない
この程度の幸せにも
ブドウ糖の甘みにも

罪深さを
ニンゲンの業を
たった今、味わったように

全部、わかっていたから
最初、話が始まる前から

君が
あの話の続きを
話しだすよりも
ずっと前から

何時も通りの僕なら

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