ナニ・カシラ?

『寂しくなったら』
『電話してね』

僕に言ってくれた
君の優しいことばに
甘えるように
スマートフォンの
画面の右上にある
バッテリー残量を確認すると

僕は君と
通話可能な時間を
頭の中で
概ねの値、計算をした

この電池の
パーセンテージなら
一時間チョイなら
大丈夫だと思った

次に考えた
僕が思考したことは
君に話す内容だった

どうすれば
この寂しさ(コドクの色)を
君に
マジメに伝えられるか?

君が
既に持っている
自尊心と
死生観を傷つけずに

この寂しさに
根拠や理由、そして、正しさは
ホントに必要?

言い方
伝え方によっては
今よりも君という存在を
僕自身から
遠ざけてしまうかもしれない

リスクは
存在、散在している

僕のなか
最初に
生まれたのは
神様への
素朴な疑問だった

それが
僕にとっての
一番の
なかなかな難問
つまりは
新しい課題となった

君のことが
スキだとは
なるべくなら、まだ
僕は
伝えたくはなかったからだ

輪郭の甘さと
内部の曖昧さを
多分に含んだ
スキという
この特別な感情には

実際のところ
名前もなければ
マニュアルにも
載っているような
正式な名称もない

昨日、僕がつけた
日記に
君にとっての
正解らしい答えはないし
仕事中の
お気に入りのメモ帳にも
この内容にあてはまる記述は
一切なかった

君と
通話可能な時間が
自然体の表情のまんま
僕の
スマートフォンのバッテリーは

止めどなく、無慈悲に
経過する時間と
完璧に比例して
正確なテンポを
また刻むように
僕側に予め用意されてあった
モラトリアム期間は減っていく

心に抱えた
些細な矛盾は
やがては
世の中の不条理に
その姿と形を変えた

憶えていないような
不明瞭な記憶を
辿るつもりで
ナニカシラを僕は思い出す

君は
きっと
僕に言うと思う
はなしの最初に
通話のはじめに

多分、恐らくは
もしもしの
クッションことばの
直ぐ、チョクゴに

『で、』
『今日の用件は』
『ナニカシラ?』

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