◇コラム【食べ物通信20】いちじく
古代から続く果物は女性に嬉しい効果を多く持っています
紀元前から愛される果物
皆さんは、いちじくがお好きでしょうか。生のものやドライフルーツ、和菓子やケーキなど様々な形で食べられています。プチプチとした触感や優しい甘さが人気の果物です。
いちじくの木は古くから世界各地で「生命の木」と言われていました。果物の中でも歴史が古く、古代エジプトの壁画や、旧約聖書にも登場しています。アラビア半島原産と言われ、地中海沿岸地方では、約6000年前から栽培が行なわれていた記録が残っています。古代ローマでは、最も一般的な果物のひとつであり、当時砂糖が貴重だったため、砂糖の代わりになる甘味料として重宝されていました。
日本には1591年、ポルトガルから来た神父が長崎に伝えられたと言われています。当時の日本では、「蓬莱柿」、「南蛮柿」、「唐枇杷」などと呼ばれていました。
現在、国産のものでは「桝井ドーフィン」と呼ばれる品種が一般的に食べられています。それは、明治41年、桝井光次郎氏(広島県の種苗業者)がアメリカから持ち帰り、栽培に成功した品種です。正式には「ドーフィン」という品種ですが、日本に持ち帰った桝井氏に敬意を表し、名付けられました。
日本で栽培されているいちじくの約8割はこの品種です。熟すと皮が紫色になり、ほどよい甘味とさっぱりとした風味を持つことが特徴です。
内側からきれいになりましょう
いちじくにはビタミンB群やカリウム、カルシウム、鉄分、亜鉛などのミネラル分がバランスよく豊富に含まれています。また、ペクチンやアントシアニン、フィシン、植物性エストロゲンなどが含まれ、女性は注目したい果物です。
亜鉛は人体に必須と言われるミネラルの一種です。味覚を正常に保つ、免疫力の向上などの働きをしています。体内で作り出すことができないため、食事から摂取する必要があります。亜鉛は汗をかくことによって流れ出てしまうので、発汗量が多い人は、日常的に亜鉛を適量摂ることを心がけて下さい。
水溶性食物繊維のペクチンは、善玉菌のエサとなって乳酸菌を増やし、腸の働きを活発にします。腸内環境を整えることで、便秘の解消や、血糖値やコレステロールを下げる効果があります。また、体内の水分を含むことで粘着性のある物質に変化し、糖質の吸収速度をゆるやかにする効果があります。
いちじくの果皮や果肉の赤い部分には、ポリフェノールの一種であるアントシアニンが含まれています。目の毛細血管を強化し、眼精疲労や視力を改善する効果が期待できます。また、強い抗酸化作用を持つので、肌や粘膜の老化を防ぐ効果があります。
フィシンはいちじく特有のたんぱく質分解酵素です。カットした際に出る乳白色の液体の中に多く含まれます。その他にもリパーゼ(脂質分解酵素)やアミラーゼ(糖質分解酵素)を含むので、食後のデザートとして食べることで、消化を促進する作用が期待できます。
植物性エストロゲンは女性ホルモンと似た成分をしています。乱れたホルモンバランスを整え、女性特有の生理痛や更年期障害などを緩和する効果があります。
おやつにおすすめ!食べ過ぎは気を付けて
特にドライフルーツにはカリウムが多く含まれており、体内のナトリウムの排泄を促す働きがあります。高血圧の予防やむくみの解消に効果的です。ドライフルーツをおやつとして食べる方も多いと思います。生の状態に比べ、ビタミン・ミネラル類、食物繊維の量が増えていますが、食べ過ぎには気を付けてください。
生のものを購入する際は、皮にハリと弾力があり、傷のないもの。お尻がふっくらと大きく、全体に赤みが回っているものがおすすめです。
いちじくは日持ちしないので、入手後はなるべく早く食べるようにしましょう。残ってしまった場合は、一つずつラップで包み、冷蔵庫に仕舞ってください。
ドライフルーツなどでも手軽に良質な栄養を摂ることができます。疲れた胃腸を整え、心地よい秋を迎えられるようにしましょう。
なぜ「無花果」なの?
私たちが食べているいちじくの中の、赤くプチプチとしている部分が花なのです。普通の花と違い、直接は見えないことから「無花果」と名付けられました。その文字は当て字として利用されています。
一度に多くの実を付けることから子宝・多産・裕福などの花言葉があります。名前の由来として、他にも、いちじくが少しずつ熟していく過程を表した「一熟」が変化したという説や、原産地ペルーでの名前を中国で漢字に変換した「映日果」(インジークオ)が、日本で訛って変化したという説などがあります。