◇コラム【新・食べ物通信 11】ほうれん草 ~ パワーの源 女性は注目したい野菜です ~
歴史とともに美味しく進化
皆さんは、ほうれん草はお好きでしょうか。茹でてお浸しや胡麻和えにしたり、ベーコンと炒めたり、パスタの具材にするなど、日々様々な料理で活用されています。
ほうれん草の原産地はアフガニスタンやトルコ、イランなどの西アジア地域と言われ、そこから東西に分かれて広まりました。長い期間をかけてヨーロッパ方面で西洋種、アジア方面で東洋種が形成されていきました。ヨーロッパへは12世紀に北アフリカから渡り、16世紀にはヨーロッパ全土に広まったと考えられています。
東アジアへはシルクロードを通って広まり、7世紀頃に中国へ伝播。日本へは江戸時代に伝わりました。林羅山(はやし らざん)の『新刊多識編』(1631年)には「菠薐(ホウレンソウ)」「菠菜(ポーツァイ・中国語でほうれん草の意)」「赤根菜」としてほうれん草の記録が残されています。
明治時代には欧米から西洋種も導入されましたが、西洋種はアクが強く土臭いことからあまり好まれませんでした。ほうれん草が現在のように注目されるようになったのは昭和になってからのことです。
相性を知って効率よく摂りましょう
第二次大戦後にアニメ「ポパイ」の影響と、品種改良も進んだことで栄養価の高い野菜として消費が急増しました。
実際、緑黄色野菜の中でも栄養価が抜群なことで知られています。鉄、マンガンなどのミネラル類、ビタミンB群、葉酸を豊富に含んでいます。ビタミンCが鉄分の吸収を助け、葉酸やビタミンB群が造血を促すため、効率のよい鉄分摂取に繋がり、貧血予防に効果を示します。一緒にお肉や魚、卵などの動物性タンパク質を含む食品を摂(と)ることで鉄分の吸収率が上がります。
一方、お茶やコーヒーに含まれるタンニンは吸収を妨げるので、一緒に摂取するのは控えたほうが良いでしょう。
アクは “悪" ではありません
ほうれん草にはシュウ酸というアク成分が多く含まれています。かつて多量に摂取すると結石の原因になると言われてきました。
現在では人体に害を及ぼすものではないことや、多量に摂取する可能性が少ないこと、アクの少ない品種が増えてきたことにより、あまり気にされなくなってきました。
シュウ酸はカルシウムとくっつきやすい性質があるので、けずり節や牛乳などカルシウムを多く含む食品と同時に摂取することで、シュウ酸を体内に吸収されにくくすることができます。またシュウ酸は水溶性であるため、多量の水で茹でこぼして溶出させるなど、生食を避けた調理法を工夫する事が必要とされています。
パワーの源を元気なうちに使う
選ぶ際は葉先までピンと張りがあり、厚みがあって濃い緑色のものを。また根元が赤くてふっくらとして、茎が細すぎないものを選びましょう。葉色が濃いものほど栄養価が高いと言われています。しおれているものは鮮度や保存状態がよくないので避けましょう。ほうれん草は葉先からどんどん水分が蒸発してしまうので、買ってきたものは新鮮なうちに調理してください。
茹でたら水にさらし、アク抜きをしましょう。急激に冷やすことでアクが流れ出ていきます。ずっと水につけていると栄養分まで流れてしまうので注意が必要です。
保存の際は葉先が乾かないよう湿らせた新聞紙で包み、ビニール袋に入れます。立てて冷蔵庫の野菜室に入れ、2~3日を目安に使い切りましょう。固めに茹でてから冷凍保存するのも便利です。冷凍する場合は、茹でた後に水気をよく切り、小分けしてラップに包んで冷凍庫へ仕舞いましょう。
ほうれん草にはミネラル類とともに働くビタミンが多いので、疲れが溜まっている人、元気の出ない人は日々の料理でほうれん草を取り入れてみてください。季節の変わり目となる今の時期、疲れを溜めこまないように気を付けつつ、元気を蓄えて冬を迎えましょう。
(五島沙也可)
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【レシピ】
ほうれん草とツナのゴマ味噌和え
材料《 ほうれん草・・・1袋 》
《 ツナ缶・・・缶(約70g)》
《 かつお節・・・1袋(約3g)》
A《 すりごま・・・大匙1 》
《 味噌・・・大匙1/2 》
《 砂糖・・・小匙1/4 》
《 しょうゆ・・・少々 》
①ほうれん草は水できれいに洗う。
鍋にたっぷりの湯を沸騰させ、塩少々を入れる。
ほうれん草を加え、さっと茹で、冷水にとる。
②ボウルに水気を絞ったほうれん草、Aの調味料、ツナ缶を入れ、
よく混ぜ合わせる。最後にかつお節を加え、さっと和える。
*ほうれん草の根元の赤くなっているところにはマンガンという栄養素が豊富に含まれており、骨の形成に重要な働きをしています。残さずに使いましょう。
このほかにも様々なレシピが公開されています。皆さんのおいしい食べ方を見つけてください。
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