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"スマート・リジェネラティブシティ"という考え方 〜DX/SXとコミュニティで都市再生を共創する〜
growのかかげる”スマート・リジェネラティブシティ”という考え方について、事例を踏まえながらご紹介します。
世界の潮流は「サステナブル」から「リジェネラティブ」へ
◆「リジェネラティブ」とは?
近ごろ頻発している異常気象による自然災害や、深刻化するエネルギー資源問題。今や環境問題は世界的にも重要な課題です。日本国内でも今ある自然環境を持続・維持していく「サステナブル」な取り組みは、人々の生活に溶け込みつつあります。
そんな中、数年前からサステナブルに代わる言葉として「リジェネラティブ」という言葉が使われるようになってきているのをご存知でしょうか。
「リジェネラティブ」とは、英語で「再生」の意味。今の自然環境を維持・持続していくことを目指すサステナブルに対し、自然環境が本来持っている生成力を取り戻し、再生につなげるという、より発展的な意味を込めた言葉です。
「リジェネラティブ」は国内外のメディアでも注目を集めており、米国発のメディア『WIRED』日本版では「リジェネラティブ・フードラボ」「リジェネラティブ・カンパニー」そして2024年のVol.54では「リジェネラティブ・シティ」と、これまでに様々な特集を組んでいます。
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遡ることおよそ1年半前。2023年7月には、growをプロデュースするPLANTIOのCEO・芹澤が『WIRED』日本版ポッドキャストにゲスト出演し、リジェネラティブをテーマにアーバンファーミング+エンターテインメント=アグリテインメントのあり方について紹介していました。
今回は、『WIRED』日本版 「The Regenerative City 未来の都市は、何を再生するのか」が発売されたこのタイミングで、growが掲げる「スマート・リジェネラティブシティ」構想が描く未来と、パートナー企業や行政との取り組み事例をご紹介します。
◆リジェネラティブ潮流は「農」から始まった
まずは昨今の「リジェネラティブ」潮流の起源についてご説明します。リジェネラティブは当初、環境問題に配慮した農的活動を指す言葉として使われ始めました。生物多様性に特化した農的活動を行うビジネス連合・One Planet Business for Biodiversity (OP2B)は、リジェネラティブな農的活動の4つの目的を以下のように定めています。
4つの目的
農場とその周辺おける生物多様性の保護と向上
土壌の中における炭素と水の保持能力を高め、植物と家畜、農の力を活用すること
肥料や殺虫剤の使用を減らしながら作物と自然の回復力を高めること
農場コミュニティの生活サポート
アメリカ、オーストラリア、イギリス、オランダ、フランス、デンマークなどのアーバンファーミング※1 が盛んな海外諸国では、上記の目的に合致したリジェネラティブな農の取り組みが始まっています。
不耕起栽培や自然栽培の推進、コンポスト設置による生ゴミの堆肥化、固定種・在来種の栽培による野菜の種継ぎ、Farm to Tableによるフードマイレージの削減、アップサイクルなプロダクトの使用などを積極的に行うコミュニティファーム※2 がスタンダードになりつつあるのです。
※1 アーバンファーミング:農家による産業としての農業とは異なり、家庭菜園やレンタル農園で野菜を育てて食べるなど、人々が都市と調和しながら農的なライフスタイルを実践すること。
※2 コミュニティファーム:地域の人々が様々な目的を持って集い、一緒に野菜を育て、交流することを目的とした農園のこと。
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参考:2020年春・パリにオープンした欧州最大のコミュニティファーム「ナチュール・ユベンヌ」。収穫箱をプランターにアップサイクルした市民菜園には長いウェイティングリストができているそう。収穫した野菜が味わえるレストランも併設され、訪れた人はFarm to Tableも体験することができる。
growではじめる「リジェネラティブ」なアーバンファーミング
◆DX/SXとコミュニティで野菜栽培を楽しく続けるしくみ「grow」
実は日本の都心にも、コミュニティファームが存在します。それが東京・大手町の大手町ビルヂング屋上にある「The Edible Park OTEMACHI by grow」。
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参考:「The Edible Park OTEMACHI by grow」は、国内最大級のスマートコミュニティファーム「grow FIELD」。grow FIELDは東京を中心に全国に広がっている
世界中の都市に暮らす人々にとって、これから必要不可欠な存在になっていくであろうコミュニティファームですが、野菜栽培の知識や経験を持った人が少なく思ったように野菜が育てられない、他に仕事をしながらだと負担が大きく続けられない、などの様々な課題も挙がってきています。
このような課題を解決すべく、私たちは都市生活を送る人々がアーバンファーミングを楽しく続けるためのしくみである「grow」の社会実装の取り組みを進めています。
「grow」はIoT栽培センサー「grow CONNECT」と、連携するAI栽培サポートアプリ「grow 」、そしてその2つがインストールされたスマートコミュニティファーム「grow FIELD」を軸とした、アーバンファーミングプラットフォームです。
growのコンセプトは「みんなでたのしく、育てて食べる。」
growをインストールしたスマートコミュニティファームであれば、野菜の知識がなくてもアプリを見ながら誰でも野菜を育てることができます。また、アプリ内にはコミュニティ機能もあり、皆で共同栽培を行うので、直接を頻繁に畑に来ることができなくても、様々な形でコミュニティファームに関わることができるのです。
◆生ゴミやタネを循環させる「リジェネラティブ」な取り組み
以前は遊休地活用や屋上緑化など、都市の環境改善目的にとどまっていたアーバンファーミングですが、ここ数年では生物多様性の保全、食育、ゴミ問題の改善、地域コミュニティ活性化、エリアマネジメントなど、多岐にわたる社会課題の解決の糸口として期待されています。
growではこれらの課題に対してより「リジェネラティブ」にアプローチするためのしくみを用意しています。以下に事例を挙げてみましょう。
・ゴミ問題の改善・農と食の循環
LFCコンポスト × grow
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都市での暮らしにおいてフードロスやゴミ問題は大きな課題です。growではバッグ型の家庭用コンポストの開発から普及活動までトータルに手掛けるLFCコンポストさんとともに、コンポストを通した「農と食の循環」を推進。全国各地のgrow FIELDには大型のコンポストを設置し、コンポスト堆肥の体験講習会も定期的に開催しています。
・タネの循環・食育
アサヒ農園 × grow
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grow FIELDで育てている野菜は、タネをつなぐことのできる固定種や在来種※3 。140年前から野菜のタネの開発・販売を手掛けてきたアサヒ農園さんの協力を得て、タネから野菜を育て、収穫、タネとりまでを行っています。タネはまた次の季節に蒔き、また繋いでいくことで、だんだんその土地の気候に合った野菜になっていくので、病気にかかりにくくなるのも魅力です。
また、慣行栽培ではあまり育てられることのない伝統野菜などの珍しい野菜を育てて食べることは、食農教育にもつながっています。
※3 固定種・在来種:野菜のタネは大きく固定種(在来種)とF1種に二分される。農業の慣行栽培で使われるタネは基本的にはF1種と呼ばれる品種改良が進んだ野菜のタネだが、雑種のためタネを取っても親と同じ形質の野菜になるとは限らず、一度収穫して終わりとなる。対する固定種・在来種は育てた野菜の中で良い状態の作物からタネを繋いで形質を安定させた品種なので、収穫して終わりではなく、タネをとり、次の季節にタネを蒔くことができる。
・エリアマネジメント・地域コミュニティ活性化
三菱地所 × grow
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そして、都市に暮らす人々が、様々なリジェネラティブな農的活動を行うためのコモンズ(共有空間)が、grow FIELDです。三菱地所さんとのプロジェクト「The Edible Park OTEMACHI by grow」では、収穫した野菜を近くのレストランなどで味わうFarm to Tableや、都市農園ならではの景色を味わえるNight Farmなどを開催。grow FIELDを基点に地域のコミュニティが広がっています。
growが描く”スマート・リジェネラティブシティ”
このように、昨今世界中で謳われ始めている都市全体をリジェネラティブ(再生)していくことを、growというデジタルファーミングプラットフォームと重ねることで、スマート化(DX/SX)し、見える化することが、”スマート・リジェネラティブシティ”という考え方なのです。
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◆growから広がる”スマート・リジェネラティブシティ”の輪
”スマート・リジェネラティブシティ”の考え方は、様々な業界・分野とのパートナーシップによって広がりをみせています。
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・growプラットフォームを活用した野菜栽培をコンテンツ化
クロノスファーム × grow 『はたけLABO』
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千葉県市原市にあるgrow FIELD「クロノスファーム」では、親子で楽しめる食農教育プログラム「はたけLABO」を開催。野菜の種の観察、土入れ・苗植えなど体験型のコンテンツを提供しています。
・アーバンファーミングの社会実装を推進する団体・組織・活動
Tokyo Urban Farming | SHIBUYA Urban Farming
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2021年に発足したTokyo Urban Farmingは、「Tokyoを食べられる森にしよう。」というコンセプトのもとに活動を続けており、「アーバンファーミングを楽しく、美しく、あたりまえなものにする」ことを目指しています。
2023年には都内のアーバンファームやキーパーソンのリサーチをまとめた書籍『Urban Farming Life』を発売し、東京ビエンナーレ2023にて「東京の食と農の未来」をテーマにした祭典「TOKYO ART FARM」をプロデュース。
2024年には渋谷区および渋谷区内の企業・団体や、教育・研究機関によるSHIBUYA Urban Farmingプロジェクトもスタート。産官学一体による推進力によって、アーバンファーミングの加速度的な広がりが期待されています。 更に、2025年春には池尻大橋に新たなコミュニティファームのオープンも予定しています。
・growプラットフォームを支えるプロダクトの開発
growアプリ|grow CONNECT
インドアファーミングユニット | モジュールファーミングユニット
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grow独自の「Crowd Farming System※4 」を支える IoT栽培センサー「grow CONNECT」の開発・製造はIoT製品の企画開発を手掛けるShiftallさん、そしてAI栽培ナビゲートアプリ「grow」はソフトウェア開発会社のTechno Braveさんにご協力いただいています。
「街のスキマ」に置けるスマートコミュニティファーム・「モジュール型ファーミングユニット」は、環境配慮型菜園ソリューションを持つ大建工業さん、エクステリアの高い技術を有する四国化成さんと企画・開発。
空室やコワーキングスペースの共有スペースで手軽にアーバンファーミングを始められる「インドアファーミングユニット」は、先行開発型ファクトリー・RDSさんと企画・開発。
今後も様々な業界とのコラボレーションにより、growプロダクトの領域を広げていきたいと考えています。
※4 Crowd Farming System : 「grow CONNECT」および「grow」がインストールされたスマートコミュニティファーム「grow FIELD」にて人々(Crowd)が行った栽培アクティビティデータをAIに学習させることで、いつでも季節や場所に応じた最適な栽培方法をナビゲートしてくれる、画期的な栽培システム。
◆growとともに農と食のある場づくりをしませんか?
growをインフラとしたアーバンファーミングによって、都市に暮らす人々と自然、そして食や農を軸とした文化がふたたび再生する世の中を目指す—。
私たちの"スマート・リジェネラティブシティ"構想についてもっと詳しく知りたい、「grow」のアーバンファーミングを体験してみたい、一緒にプロダクトを開発したい、など、どんな関わり方でも構いませんので、お気軽にご連絡ください。
振り返ると”リジェネラティブ”になっていて、それがちゃんとデジタルを通じて可視化出来ており、いつのまにか農が生活の中心とシフトし、グリーン・フード・インフラという名のアーバンファーミングがあることで、安心安全な農と食に誰もがアクセスできるみんなが主役の心穏やかな共給共足の世界を想い描いています。
引き続きみなさんと手を携え共創・共奏することで、一緒にこの豊かな世界を創り上げたいと思っています。