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「スクルージ」もしくは「クリスマス・キャロル」

残暑厳しい最中、何故にクリスマス? と感じた方が多いと思います。しかし、舞台においては、そろそろ12 月辺りのチケットが発売になる頃だったりします。

クリスマス・イブ狙いで「スクルージ」のチケットを買いに挑んでた頃が懐かしい! 

原作はディケンズの「クリスマス・キャロル」です。同タイトルのミュージカル映画が作られ、後に楽曲が増やされ舞台化し、タイトルも「スクルージ」と改められました。

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守銭奴で思いやりの心を持たない金貸しのスクルージのもとに、クリスマス前夜、同僚であったマーレイの幽霊が現れます。重い鎖に囚われた姿のマーレイは、スクルージに、このままでは自分以上に悲惨な運命が待っていると忠告します。スクルージの生き方を変える為に3人の幽霊が訪れると告げ、マーレイは去って行きます。

やって来たのは「過去」「現在」「未来」のクリスマスの幽霊。彼らによって見せられる、自分が辿った人生や現在の人々の姿。それらの様を見たスクルージは凝った心を動かされます。

最後に訪れた「未来」の幽霊。「過去」「現在」と違い、不気味な様相をしています。「未来」の幽霊が見せたのはスクルージが死んで喜ぶ人々の様子でした。

スクルージはそれまでの自分の生き方を変え、人との付き合いを大切にし、クリスマスを楽しむようになりました。

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かなりザックリしたストーリー紹介ですが、大体こんな感じですかね。

舞台ですが、オーヴァーチュアが素晴らしい。

賛美歌調の曲、まずは少しずつ歌声を重ねます。クリスマスの街を駆け回る子供や、買い物を楽しむ人達。きらびやかな店、寄付を募る聖歌隊など。歌声は徐々に盛り上がり、全員が様々な歌を口にし、ザワザワとした様子が伝わります。

歌声も雑踏のざわめきも頂点に達するかというところで止まり、人々も動きを止めます。舞台上は一瞬の静寂。どうなるかと舞台を見入ると、全員が直立不動で高らかにテーマを歌い上げます。楽器が少しずつ入り、華やかな音楽と共に人々も動き出します。

クリスマスの街並みの風景が舞台上にあり、沢山の人が楽しむ姿が再現されているのです。

大道具も衣装も、少し古いイギリスといった感じ。原作者はイギリスのディケンズなので、作品が描かれた当時の風俗が反映されているのでしょう。

オープニングで自然と物語の世界へと入り込めます。

他にも書きたいのですが、オーヴァーチュアだけで誌面が埋まってしまいそうなので先へ進みます。

華やかな楽曲で始まるのですが、主人公は偏屈な年寄りです。クリスマスなんて寄付を求める輩がいて鬱陶しいと追い払ってしまうような人物。

つまり、主人公の登場と共に、舞台は陰鬱としたものに代わるわけです。落差で主人公の人柄が判る演出は見事だなぁと思うのですよ。

あ、映画版は楽曲が流れますけど、スタッフ紹介かなぁ、字幕があるだけで、始まりはスクルージが聖歌隊を追払うシーンだったかな。

流れは一緒ですが、舞台の演出はよりわかり易く、主人公のキャラクター像が浮き立つ物になっています。

そんなスクルージが幽霊に酒(?)を飲まされ浮かれたり、かつての恋人を想い切ない気持ちを吐露したり、部下の家族を思いやる気持ちを抱いたり、自分の死に様を見て、こんな死に様は嫌だ! と奮起したり。 

損得勘定で物事を計るケチな人間が、物語が進むに従い、実際には感情豊かで人を愛おしむ事が出来る人物だとわかってくるのです。

ちなみに私が観ていてるのは、全て主演が市村正親さん。コミカルな芝居はスクルージを愛すべき人物だと心底感じさせてくれました。

舞台の最後で語られる『家族』という台詞は、人を寄せ付けなかった自分との決別と、大切なものを見付けた幸福を噛み締める言葉になっています。

ええ、もう、泣きますわ!

実際、泣きました。
幸せそうに語るスクルージに。
彼が変わって、幸せになる人がいる事に。

多分、今でも泣けます!
CD聴いて、ウルっときますから。

観劇後の幸福感がとても高い作品であり、クリスマスには観たいと楽しみにしてしまう作品。ミュージカル初心者や子供にもお薦め出来ますよ。

舞台はちょっと…… と言う方には映画をお薦め。ただし製作年が1970年と古いです。数年に一度はテレビ放映もありますし、今ならネットの海に漂っているかもしれないですね。観るなら違法アップロードには手を出さないようにして下さいませ。







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